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群雄割拠のアレとコレ  作者: 坂本杏也
信長の椅子と桶狭間
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【二】

 これだけ丁寧に対応していれば、向こうからも当然友好的に言葉が返って来るだろうと考えていた宗久の耳には、言葉どころか相槌すら聞こえて来なかった。しかし、頭を下げたままの宗久は今一度心を落ち着けて冷静になり一つ考える。あの歴史上でも様々な逸話を持っている松永久秀の号を所持している男だ。二人きりのこの会談。しかも、向こう側からの申し出の話をこちらが受けあげたという状況でも何も思っていないのかもしれない。

 様々な思いを抱えたまま宗久は表情を変えずに頭を上げる。すると、目の前に座る男はこちらの事を一切気にしていないようで、自分のウインドウを開いて何かをいじっていた。

「あの、何を?」

 彼の耳に届くかは分からないが、そう聞かずにはいられなかった。


 宗久の不安とは裏腹に数秒で言葉が返って来た。

「海北綱親ってのを調べてんだ」

「海北綱親ですか?」

 ウインドウ越しの久秀の顔が上下にゆっくりと動く。

「浅井長政が付けられる号の一つらしいな。浅井三将とか言われてるみたいだが、どうやら小谷城の戦いで秀吉とやり合ってるらしいが……、それがそいつらとどう関係してるかは分からんな。史実通りなら敵同士」

 少し含みを持たせた言い方が気になるが、それよりも、

「そんなに簡単に情報が出て来るものなんですか?」

 戦でも現実でもこの『G.O.U』というゲームにおいても重要になる情報。相手の能力や戦力、レベルに技能、武器や防具と事前に分かってしまえばこれほど強い武器も無い。

「まあ、ゲームの中にもそういうのを調べるのが好きな連中がいるって事だ」

 詳細は語らずに話を終わらせた久秀は、ゆっくりと眼前に広がっていたウインドウを閉じると、長机の上に置かれている酒を一気にあおった。


「信長の号を取得する為に協力はさせて貰う訳ですが、当然、松永様が信長の号を得たあかつきには我々に大きな利益が出るように動いてくれる訳ですよね?」

「ああ、史実でもそういう協力関係で成り立っていた訳だからな」

 その言葉に宗久はホッと胸を撫で下ろす。

「それが約束されるのならば、どんなことでも協力させて貰います」

 もう一度頭を畳に擦り付けるように下げた。が、すぐに上げ、

「それでまずは何から始めましょう?」

 目を輝かせる。


「商人ってのは本当に自分に利益が出れば何でも良いのか?」

 上機嫌で笑いながら言う久秀は再び酒を煽ると、

「まあ、お前が居なかったらこちらは一人だ。協力者は一人でも多い方が良いからな」

 と、不敵な笑みを浮かべる。

「お前は、史実の信長がどうやって世に名前を広めたか知ってるか?」

 その質問が先程の自分の上げた問いの答えになるのかは分からなかったが、

「世に広めたという風に言えるかは分かりませんが、名前が広まったのはやはり桶狭間おけはざまの戦いではないですか?」

「そうだな。だから、まずはそこから攻めてみようと思う」

 満足そうに笑っているが、桶狭間の戦いから攻めてみるとは一体どういう事なのか、全く意味が分からなかった。

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