【十四】
茜音の頭の中には数カ月前の楽しかった記憶が蘇る。
徐々にメンバーがゲームから遠ざかって行く中、元々一人でプレイしていた彼女にとっては、その時に戻ったと割り切ってプレイすることで寂しさを紛らわせていたのだが、ここ数日、要に誘われるようになってからは、浅井家のメンバーと遊んでていた時と同じかそれ以上に楽しかった。
あの日、あの時、意を決して要を誘って本当に良かったと。
「でー、ここに戻って来たのは何か用事があって?」
清貞から尋ねられるので、
「ううん、もうゲームを終わろうと思って帰って来ただけ」
そう告げると、彼は鼻で笑いながら、
「相変わらず律儀だねー?別に町中でログアウトすれば良いのに。わざわざ帰って来るの面倒じゃない?」
それも一理あるとは思いながらも、こういうログイン率の悪いプレイヤーに限って適当な場所でログアウトしてしまう為、間が空いて次にインした時に自分がどこにいるのか分からなくなるんじゃないか?と、茜音は黙ったまま愚痴のようになってしまった言葉を飲み込んだ。
そして、いつまでも付き合っていられないと、
「私、明日も早いから今日はこの辺で落ちるから」
言葉の抑揚少なく冷静に呟いた彼女はそのまま姿を消してしまった。
彼女の姿が消えてしまった場所をボーっと眺めたままの清貞は、
「同じ浅井家の仲間だってのにどうしてこうも俺に対しては愛想が無いのかねー?」
言いながら右の頬を人差し指で軽く掻いた。そして、
「さて」
と、声を上げながら立ち上がると、城内に入って来た時の茜音のように鼻歌を奏でながら城の中へと足を踏み入れる。畳張りであるその部屋の奥にある障子を開け、廊下へと出ると、
「流石に模様替えが好きって人はいないから、この辺はずっと変わらんねー」
辺りを見回しながら呟く。
自分の家や城は好きに内装を変えることが出来るのだが、あくまでもそういう事をするのが好きなプレイヤーの為のサービスみたいなもので、特にこだわりが無ければいじらなくても何の問題も無い。あくまで自由度が高いというゲームの質を上げる一つのようなものなのである。
長政が城を得た時のままの何の飾り気の無い壁や真っ白い障子紙だけが張られている障子に特にデザインも入っていない襖。それらをゆっくりと見つめながら清貞は廊下を更に奥へと進んで行く。
「城の中も部屋の中も何も変わって無いけど、俺が居なかった間にゲーム自体は色々と仕様が変わってるだよなぁ」
感慨深そうに言うと、自分のウインドウを開いて闇市場で検索を始める。
「知らない武器に装備、アイテムと素材」
彼は指を動かしながら、
「新しい武器は欲しいけど、やっぱり高いんだろうなぁ」
そこでウインドウを閉じて、再び足を進める。
「さてさてー、このお城にはどのくらいのお金と素材が備蓄されてるのかなー?っと」
楽しそうな声を上げて一番奥の部屋へと姿を消した。




