【十三】
小高い丘の上にある小谷城。四方を高い塀で囲まれたその城には数日前に光たちが訪れていたが、あまり身内以外と交流の無い浅井家にとっては久しぶりの来客であった。
認められているプレイヤー以外は開ける事の出来ない城門をゆっくりと開けた茜音は、楽しかった今日一日の事を思い出して鼻歌交じりに庭へと足を進める。前日に要と二人で迷宮を回ってはいるが、フルパーティーで冒険をするというのが本当に久しぶりで、長政が号を取得した直後に浅井家の四人で楽しく迷宮などに潜っていた時以来であった。そんな昔の記憶もあって、彼女からは自然と鼻歌が出てしまったのかもしれない。
普段、新しい技能などを覚えた時に試しに使う場所にしている庭までやって来て、ログアウトをしようとしていると、背後から声を掛けられた。
「なんか、随分ご機嫌だねー?」
自分が奏でていた鼻歌が聞かれてしまったという恥ずかしさと急に声を掛けられた驚きで一体どんな表情をしていただろう。急いで声の聞こえた方へと振り返ってみると、そこには小柄な男性が縁側で胡坐をかいていた。そして、彼女とは正反対のニコニコとした笑顔を作って、
「久しぶりー」
と、手をヒラヒラさせている。きっと本人としては手を振っているつもりなのだろう。
浅井家で一番ログイン率が良いのは言うまでもなく茜音であり、次点で長政と続いている。そこから少しだけ幅が開き清綱、そして更に幅が開いて雨森清貞となっているのだが、そんなログインをしていなかった浅井家でも一番のレアキャラが今、まさに茜音の視線の先に座っていた。
「もうゲームやめたのかと思ってた」
そんな茜音の正直な言葉に、
「まー、受験とか新生活で色々忙しかったのはあったけど、みんなで遊ぶのは楽しかったし、絶対戻ってこようとは思ってたけどね?んー、少し遅くなっちゃったのは事実だけど」
苦笑いで言うと、久しぶりに再会した旧友との嬉しさに彼の言葉は止まらない。
「今日はゲームに来てるのは綱親ちゃんだけ?」
そう聞かれ、どう答えようか少しだけ悩んだが、彼女は素直に、
「清貞があんまりゲームにインしなくなってから、長政と清綱もちょっとずつイン率が下がっててね」
「えー、マジ?」
驚いた顔をした清貞だったが、すぐに申し訳なさそうな表情になり、
「それはちょっと悪い事したなー」
でも、
「俺、受験でゲーム出来なくなるって言ってたよね?」
茜音はその言葉を聞いて半年以上前になるであろうゲームの中での出来事を一生懸命掘り返してみるが、一切思い出すことが出来ず、
「ごめん、覚えてない」
彼女も苦笑いで告げた。
「まー、過ぎた事だしそれはいいや」
自分のことであるはずなのだが、随分とあっさりとしている。良い意味で言えば切り替えが早いという事だが、悪く言うと軽薄。彼のそういうところがあまり好きでは無かった茜音ではあったが、
「でもさー、俺が正式に復帰したのが分かれば二人もきっとログインするようになるでしょ?そしたらさ、またみんなで遊ぼうよ?」
そういう風に声を掛けられ嬉しくなる。
また前のように四人で楽しく遊べるようになるのかもしれないと思うと。
17.10.14 誤字修正




