【十一】
鬱蒼とした獣道を抜け町へと戻る中、
「とりあえず、武器の方は色々融通利いて貰う感じになっちゃったけど、用意出来そうで良かった」
安堵の溜め息を漏らしながら光が呟いた。
「そうだね。香香香さんが優しい人で本当に良かった……」
同意した葵も彼と同じように安堵の溜め息を吐きながら言う。胸に手を当てている所を見ると、心底という漢字が頭に付きそうな程だが、すぐに手を元の位置へと戻し、
「でも」
と、言葉を作ると、自分の前方を歩く光に向かって、
「光も凄いよ」
足を止めて言った。
不意の事に疑問の声を上げて振り返る光に、彼女は更に続けて、
「今回のことだって光が香香香さんと知り合いじゃ無かったら無理だったろうし、仮に製作が出来る友達が居なかったら、また別の作戦を考えていただろうし、戦闘でも色々作戦考えたり、頭使って色々考えてゲームしてるなって思うし……」
熱っぽく語ってしまったが、自分が何を伝えたいのか良く分から無くなって尻すぼみで言葉は小さくなっていく。そして、そのまま黙ってしまった葵は、この空気をどうしようかと頭をフル回転させる。
「あ、茜音ちゃんと要さんも号持ってるし、なんか選ばれた人って感じがするしさ」
何も考えず心の中にある自分の真っ黒な部分を口にしていることに気が付いて再び口を閉ざす。そのまま話し続けていると、自分はダメだと吐露してしまいそうになるから。
みんなで楽しく遊んでいるゲームの中で、どうしてこんな気持ちになってしまうのかと、変な部分でマイナス思考になってしまう自分の頭が大嫌いだった。
でも、
「俺もさ、羨ましいなって思ってた」
光からそんな言葉が聞こえて来た。
「初めて深い知り合いになれた人たちは有名な武将の号を持っててさ、その中の一人と簡単に親しくなる要の事も羨ましかったし、そんな要もすぐに号を獲得しちゃうし、一緒に巻き込まれる形でクエストを受けた人も号持ちで、町でたまたま知り合った職人さんは有名なプレイヤーの弟子だったりさ……」
光は息継ぎを一度すると、
「でもさ、あれだけ珍しいって言われてる号を持ってるプレイヤーが、これだけ身の周りにいるプレイヤーも相当特別だと思わない?」
そう言って笑う。
「神社でもそうだったけどさ、有名になるとそれだけ周りから見られたりさ大変な事も増えると思うんだ。それに引き換え俺たちは一般プレイヤーだから、そういう事は一切気にしなくて良い訳じゃん?目立たないからこそ出来る事もあるだろうし、周りの目を気にせずに遊べることだってあるでしょ?」
「光ってポジティブ」
葵がボソッと言うと、
「せっかく楽しむ為にゲームやってるのにマイナス思考じゃ勿体ないと思わない?確かに『G.O.U』ってタイトルのゲームなんだけど、それが全てじゃないってのは遊んでて分かるし、他にもやれることはいくらでもあるんだしさ」
葵が小さく頷く。
「それにさ、もしかしたら葵が織田信長になるかもしれない訳じゃん?」
「私に信長は似合わないよ」
苦笑いで返すと、
「そう?要もそうだけどさ、号が付くとそれっぽく見えちゃうからな」
言われて、要の事を思い出すと、
「確かにちょっとサルっぽい感じするかも」
そんな葵の言葉に二人して声に出して笑い合った。




