【十】
「それで具体的にはいつまでに作れば良いんだい?」
そんな香香香の言葉には生産職の職業病というか納品日を明確にしたい職人らしさを感じた。まだゲームを始めて間もない光と葵にはそんな彼女の言葉が新鮮で、驚きと尊敬を持った眼差しで視線を送っていたが、
「出来るだけ早い方が良いですけど、村正さんに言われてる仕事もあるんですよね?」
と、光が言うと、彼女は大きく首を振りながら、
「別にそっちの方はいつまでって決まってる訳じゃないし、元々は向こうが無理を言って作ってくれって言われてるんだから多少遅くなったって文句は言わないよ。だから、急いでるならいくらでもこっちを優先して作るつもりだけど?」
武器制作に使う素材のお金を優遇して貰ったばかりなのにと、何だか申し訳なくなってしまうが、
「私も長いことこの職人をやって来てるけどさ。アンタたちみたいなお願いをして来たプレイヤーなんていないから少し楽しくってさ」
ただ純粋に交渉や高値で売る為に使うというプレイヤーはこの世界にゴロゴロいるのだろうが、そこを経由して裏でコソコソやってるプレイヤーの本性を暴こうとしているヤツらなんてのは、確かにここにいる光たち以外にいないのかもしれない。
「じゃあ、その言葉に甘えさせて貰って」
そこで一呼吸置いた光は、
「NPCとはいえ城主に交渉が行くような上物の武器を宜しくお願いします」
深々と頭を下げた。それに合わせてやや後ろに立っていた葵も慌てて頭を下げる。それを見て香香香は再びクスッと鼻を鳴らして笑うが、何がそんなにおかしいのかと光と葵の二人はゆっくりと顔を上げ、不思議そうな顔、表情で彼女を見つめた。そんな一連の姿が驚くほど同調しいた為に香香香は再び声を上げて笑い、
「あー、ごめんごめん」
笑いで吐き出してしまった息をゆっくりと吸いながら、
「あまりにも動きとかが同時だったからつい笑っちゃってね?アンタら双子か何かかい?」
そう言ってまた少しだけ笑う。
「いや、そんな事初めて言われましたけど」
困惑したような表情で言う光。香香香はそんな彼では無く、彼からは見えないが後ろで恥ずかしそうにしている葵を見て少し意地悪がしたくなり、
「じゃあ、あれかな?どちらかと言うと恋人かな?」
更に頬を赤らめる彼女を見てご満悦な香香香は、
「あ、そうだ。葵さんって言ったかな?」
名前を呼ばれて赤い顔のまま振り向いた葵に、
「あなた可愛いから友達になって貰えるかしら?」
唐突にそんな申し出をしたが、別に断る理由も無い彼女は素直に申し出を受けた。そんな二人の姿を蚊帳の外でボーっと眺めていた光は、一体どういう流れでそうなったのか、理解するのに時間を掛けていたが、最後までそれを理解する事が出来ないままであった。
「じゃあ、武器出来たらまた連絡するから、それはどっちにすれば良いんだい?」
二人の顔を交互に見つめる香香香に対して申し訳無さそうに光が、
「出来れば僕にお願いします」
と、言い残してその場を後にした。
17.12.16 誤字修正




