【九】
「うーん」
何に悩んでいるのか、そんな声を上げた香香香に対して嫌な予感しかしない二人。恐る恐る光が、
「どうしました?」
と、尋ねてみると、
「どれくらいの武器を作るかにもよるんだけど、これだとちょっと少ないかな?」
バッサリと斬り捨てられてしまった。
確かに敵は強くフルパーティーである四人で回っても何とかクリア出来るといった難易度ではあったのだが、他のプレイヤーが周回してアイテムを取りに行くイベントで一度回っただけで強い武器が作れる素材が全て買えてしまうという考えが甘かったようだ。
戦闘に慣れている茜音が参加してたとは言え、残りの三人は数日前に始めたばかりの初心者なのでそれも仕方の無い事のような気はするが……。
「具体的にどれくらい必要なのか、とかは分かりますか?」
それでもめげずに光は尋ねた。
「さっき言われた量で一周分とするならば、全部で十周分は必要になるかな?」
香香香の表情から察するにそれでもまだ少ないくらいだという事は簡単に理解することが出来た。彼女も光と葵がまだまだ始めたばかりの初心者という事は知っているだろうし、あまり負担にならないようにわざと少なく言ってくれたのだろう。
なかなか大きなダメージだったようで、見るからに肩を落とす二人に、
「一本打ったげようか?」
優しい香香香の声が小屋の中に響く。当然二人は顔を上げて、
『え』
と、声を合わせて驚くが、
「そっちの子は知らないかもしれないけど、今、色んな武器を師匠に言われて作らされてるんだよ?」
徳川に送る武器を香香香に作らせると村正が言ってた例の件だろうと、光はすぐに理解したが、言葉は葵に向けて言われたもので、今日始めて会ったばかりの何も事情を分かっていないであろう彼女に分かるように話を進める。
「ある程度有名な刀や槍の注文だったり、強い武器だったりするんで、素材費用も中々バカにならないんだよ?でも師匠が、あ、村正って言うすんごい人なんだけどね?その人が材料費は出してくれるって言ってくれたからさ?あんた達が必要だって武器も練習ついでに作ってあげるよ」
二人にとっては願ってもない言葉だったが、それでも、
「村正さんに悪くないんですかね?」
「良いんだよ。あの人は馬鹿みたいにお金持ってるくせに全く使わないんだから」
と、言ってはくれるものの、
「でも、やっぱり甘えっぱなしってのはちょっと」
光が渋ったのを見て、香香香も観念したのか、
「じゃあ、ある程度お金が貯まったらで良いからその時返してよ?まあ、ツケ払いみたいな感じでさ」
二人がまだ何の反応も示していないのに、彼女は更に畳みかけるようにして、
「うーん、そっちが不服なら私が武器を作る時に欲しい素材を集めるのを手伝ってくれるって事でも良いんだけど?」
という提案に光と葵はお互いの顔を見合わせ、
「願ったり叶ったりだよね?」
「うん」
と、言い合い、光が代表して、
「武器を作ってくれる香香香さんがその条件で許可してくれるならこちらとしては有り難い限りです!」
目を輝かせて返事をした。




