【七】
自分の世界へと旅立ってしまった葵を現実と言う名の仮想世界に連れ戻し、
「とりあえず、今から香香香さんと連絡を取ってみて、あの金塊でどれくらいの武器が作れるか聞いてようと思うんだけど、皆はどうする?時間も時間だけど」
光にそう言われて改めてウインドウを開いて時計を確認する三人。もうすぐ日付が変わろうという時間になっている。
「俺は昨日遅かったし、早く寝ようかな?」
要が言うと、それに同調するように茜音も、
「私も今日は早めに寝たい」
と、昨夜遅くまで迷宮に潜って遊んでいた二人が早々に離脱宣言をした。
当然、残された一人である葵に光の視線は移って行く。目と目が合ってドキッとしてしまうが、心の中で冷静になれと自分自身に強く言って深呼吸をしてから、
「もし香香香さんに会うなら私も会ってみたいなって思うんだけど、どうかな?」
そんな言葉を吐き出した。
「多分大丈夫じゃない?音声チャットした時にちょっと聞いてみるよ」
なんというか随分と適当な感じではあるが、光は何かを思い出したように、
「あ、そっか。葵も将来的には職人とかやりたいんだもんね?」
既に職人として活躍しているプレイヤーに触れ合う良い機会だとでも思ったのか、一人で勝手に納得している。
「あ」
と、口を挟んだ葵ではあったが、そのまま否定して本心を聞かれるのが怖かった為に、
「うん、そうだね。どういう風にプレイして上手になったのか聞きたいから」
上手に合わせて話を流したつもりだったが、
「何々?葵ってばそんなに職人に興味があったの?」
と、要に話をつつかれてしまう。
「あ、いや、さっき光も言ってたけど、将来的にって話だからね?今はほら、あんまりお金も無いしさ?技能を振ろうにもポイントが足りないしね?まだまだ全然色々と準備段階な訳ですよ」
焦ったようにそう言ってアハハハ!と、空笑いを上げる。
いつになくおかしなテンションの彼女が心配になったのか、
「なんか、様子が変」
小さく呟いた茜音に男二人も深い頷きで答えた。
「じゃあ、葵の事は任せたから」
少し離れた場所を歩いて行く要は、隣に茜音を連れて振り返りながらその場に残っている二人に手を振る。言葉とは裏腹にあまり心配をしていないのか、振っていた手はすぐに止まり、前へと向き直る。
「茜音の明日の予定はどんな感じなの?」
「学校は無いんだけど、朝からバイトがあるから遊べるのは夕方過ぎくらいからかな?」
「休みにバイトなんて偉いね」
「いやいや、どう考えても社会人の方が偉いでしょ?」
茜音は笑いながら言うが、
「いやいやいやいや、平日は学校行って勉強して休日に仕事してるって事じゃん。俺は休みだからって何かを学ぶ気にはなれないね」
同じように要も笑いながら言う。
「学ぶ気は起きないけど、休みになると時間がたくさんあるって感じ?」
「そう。その通り!良く分かったね?」
「だって、そうじゃなかったらこのゲーム始めないでしょ?」
そんな会話をしながら遠く離れて行く二人の後ろ姿を見つめていた光が、
「なんかすごい仲良くなってるなあ、あの二人」
感心したように呟いた。




