【六】
要の号をいじる光の姿を見ていた茜音がふと呟く。
「豊臣秀吉は一体誰の号を持ってるんですかね?」
少し分かりにくかったが、光と葵はすぐに理解することが出来た。それに引き換え当の本人である要だけが、
「豊臣秀吉は豊臣秀吉の号に決まってるでしょ?」
茜音に向かって大真面目な顔で言った。訂正と正解を話そうと口を開いた三人であったが、それがやってくる前に彼は更に続け、
「その言い方もちょっと変じゃない?豊臣秀吉じゃなくて、プレイヤーが号を待ってるって聞き方なら分かるけどさ。例えば、茜音は誰の号を持ってるの?って感じで」
しっかりと全てを吐き出してから三人の訂正が始まった。まずは、茜音が自ら口を開き、
「私の説明が下手だったね。ごめん」
と、軽いジャブ程度に謝罪を入れてから、
「前に話した私の号の事は覚えてる?」
彼女は質問を投げ掛けながら自分の頭上にある海北綱親という赤く表示された号を指差した。要がそこかた一体に何を思い出し、何を考えたのかは分からないが、
「あ、何か思い出した!指名みたいに出来る号のヤツか!」
街道を行き交う周りのプレイヤーやNPCも振り向いてしまう程の声でそう言った。
号には、自らの手で様々な事柄をクリアしていき取得するモノと号を得た人間から与えて貰うという種類の号が存在している。浅井長政を例に出すと、彼は自分の手で号を取得した訳だが、今も尚一緒に遊んでいる友人たちの赤尾清綱や雨森清貞。そして、要の目の前に立っている茜音こと海北綱親を含む三人は長政から号を貰ったという事になる。
つまり、それは豊臣秀吉でさえ例外では無いという事になるのだが。
「俺も誰かに号をお裾分け出来るって事?」
「いや、その言い方は正しいとは言えないけど、まあ、意味合い的にはそれで良いか」
光は要に向けて適当に言葉を返すと、隣に立つ葵に、
「葵は秀吉が号を付けられるのは誰の分だと思う?」
尋ねた。
彼女は目を閉じて考えるが、
「どういう条件で選ばれてるのが分からないんで難しいけど、長政さんたちの感じだとやっぱり繋がりが濃かった家臣とかになるんじゃないかなって思うんだけど?」
「繋がりの濃かった家臣ねえ。例えば?」
「やっぱり最初に名前が挙がるのは石田三成じゃないかな?」
「かなりの有名人だけど、そのレベルが貰えるってのは良いのかね?」
光が笑いながら返すが、
「うーん、有名な人だから長政さんとか要さんの秀吉パターンも可能性としては無くは無いと思うけど、それでもやっぱり三成は秀吉がいたからこそこの世に名前を残せたっていうのも大きいと思うんで、個人的には全然入ってても良いかな?って思ってる」
そんな二人のやり取りを聞いていた茜音が隣に立つ要に対して、
「もしかして、葵ちゃんって歴女なの?」
「いや、歴女かどうかは知らないけど、詳しいは詳しいみたいよ?茜音の号も知ってたみたいだしね?」
「おぉ!なんか、ちょっと嬉しいな」
何故か茜音が照れている。
「って、なんか話が大分ズレたような気がするけど、とりあえず宗久と取引をしてみるってのは全員が賛成で良いのかな?」
光がまとめるように言うが、
「あとは、個人的に大好きな両兵衛も可能性あると思うんだよね?でも、二人ともちょっと有名になり過ぎてるかなー?」
テンションの上がった葵の耳には全く届いていなかった。
17.10.05 誤字修正




