【五】
お金があれば確かに商人とは交渉は出来るだろうが、光の思い付きのような話では全貌が全く分からないので、
「具体的には何か作戦があるんですか?」
三人の中で葵が一番に食い付いた。
「うん。今回の分でどれだけの金額になるかは分からないけど、そんなに大金を用意する必要は無いと思うんだ。高く売れるだろう武器の材料だけ手に入れば良いんだから」
その言葉を聞いて大体の予想が出来た葵は、
「もしかして、材料を揃えて武器を作って貰うんですか?」
「正解!まあ、謝礼とかで少しくらいは余分に払いたいとは思ってるけど、それでも刀の値段よりは大分価格が抑えられると思うんだよ」
「仮に強い武器が出来たとして、それを元に交渉するんですよね?」
「うん、やっぱり。強い武器ってのは高いだろうし、普通のプレイヤーには簡単に買えないでしょ?そうなると、当然、有名なプレイヤーだったり、豪商人だったり、一城の主だったりするんじゃない?」
「城主……」
呟いた葵の頭には会った事も無い一人の殿様が浮かんでいた。が、そこから我に戻り、
「そんなに都合良く行きますかね?」
「それは分からないけど、宗久と売り買い、交渉している人物と俺達が接近する事は出来るだろ?そうすれば、もっと色々な情報が聞き出せるんじゃない?」
「あ、なるほど!仮に情報が聞け無かったとしても有力者に近付けるのはメリットですよね?」
二人だけが理解したままドンドンと話は進んで、意見も出て盛り上がっているが、その場にいる要と茜音には何の話なのかほとんど分からず、置いてけぼりにされてしまっている。だから、満を持して、
「ちょっと、俺らが分からないのにドンドン先に行くのやめて貰って良い?」
要が心配そうに二人の会話に割って入った。
「ああ、ごめん」
と、いつもの苦笑いで頭を下げた光。彼は分かり易いように掻い摘んで、
「実は一人でゲームしてる時にさ」
そう前置きをして話し始めた。
葵には、闇市場という言葉を教えてくれたプレイヤーの香香香が、あの有名な村正の弟子だったという話や流れで本人と会って話したという事は伝えてあったのだが、要にはそこまで詳しい話はしていなかった為、
「香香香さんっていう鍛冶をメインでやってるプレイヤーさんに出会ってね?その人と色々あって仲良くなったんだけど、実はその人が、あの千子村正のお弟子さんでね?まあ、なんやかんや会ってその人とも知り合いになったんだけどさ」
本当に省いて省いて伝えたが、それでもある程度理解出来たのであろう。
「あの有名な村正に刀を打って貰うんですか?」
驚きを持って茜音が食い付いた。が、
「あ、いや、今回はお弟子さんの方、香香香さんにお願いしようかな?って思ってるんだけど、どうかな?」
「うう、ごめんなさい。ちょっと想像もしてなかった事にテンションが上がっちゃって先走っちゃいました」
恥ずかしそうに顔を下に向け表情を隠す茜音であったが、
「でも、村正のお弟子さんに刀を打って貰うなんてスゴイ事です!私にはそんな伝手すらありませんから、是非お願いします」
頭を下げて、
「作戦にも何も異論はありません」
素直に賛成をしてくれた。
「香香香さんっていうのは、闇市場を教えてくれた人だったっけ?」
要の言葉に光が頷く。
「まさか、そんな有名な人だったなんて」
彼も驚いて言うが、
「いや、頭にそんなのぶら下げてるヤツが言う台詞か?」
言うまでもなく、それは『豊臣秀吉』の号である。




