【十九】
「え、何これ?どういう状況?茜音が叩き落したの?」
緊張感の無い要の言葉に、
「それは後で説明するから攻撃!」
叱るように声を上げた茜音は、武器を拾いに行こうとしている信玄をけん制するようにして斬り掛かる。要も慌てて武器を構え、
『技能:太閤検地』
と、唱える。武器を持っていない今がチャンスである事は間違いないのだが、それを拾われてしまっては振り出しに戻ってしまう。しかし、移動制限が掛かっていれば簡単には拾いに行く事は出来ない。突然の状況にも冷静に対応した彼ではあるが、どこからしくない。号を獲得してそういう事にも頭が働くようになったのだろうか?
『技能:刀狩り』
当然、続けざまにこちらの技能も掛ける。絶対とは言わないが、セットみたいなものだ。
「これなら攻撃受けても一撃でやられる事は無いんじゃない?」
「動かざること山の如し」
信玄は一切動かないまま茜音の剣撃を受ける。斬り上げからの斬り下げ、そして突きへと繋がっていく三連撃も全て当たってはいるが、当然体力に変化は見られない。
少しだけ距離を取って後ろに回避して来た茜音は、苦笑いを浮かべながら、
「一撃でやられはしないだろうけど、攻撃がこれじゃ」
悔しそうに言った。
「『山』のあの技ももう少ししたら終わるから、それまで通常攻撃で様子を見よう。またしばらくあの技能『風林火山』は使えなくなるだろうし。とりあえず、せっかく落とした武器は拾わせないようにしたいね」
二人以外の声に二人が同時に振り返ると、そこには元気そうな光の姿があり、
「お、死んでなかった」
おどけたように言う要に、
「縁起でも無い事言わない」
と、茜音の注意が入る。
「今回は本当に葵に助けられた」
光が振り向いて言うと、彼女も二人のそばへとやって来ていて、
「いえ、私は」
そう遠慮がちに光に言葉を返してから要へと向き直り頭を下げて、
「さっきは本当にありがとうございました」
ショックのあまり呆然としていた自分を助けてくれたお礼だろう。しかし、技能を使っている最中で動かないとはいえボスの前で一体何をしているんだろうという思いが全員の中にあった。だから、
「とりあえず、ここからの作戦は攻撃あるのみ」
光が力強く言った。
「でも、武器を持ってなくても技能は時間が経てば使って来るだろうし、他にも技能が無いって決まった訳じゃないから一応注意は払って」
そして、要と茜音へと首を振り、
「二人はさっきと同じように前線で攻撃をしてくれる?相性が良いのか連携はバッチリだからそっちはあんまり心配してない。俺は二人にバフを掛けながら中間で立ち回る」
そして、更に葵へと顔を向け、
「武器が無い状態の今なら、あまり回復は優先しなくても大丈夫だと思うから。俺の隣で二人の攻撃をサポートして欲しい」
そこで再び信玄が動き出す。
負けじと一歩前に出た要が、
「よし!気合を入れて行くぜー!!」
高らかに叫んだ。
そこからは今までの劣勢が嘘のように怒涛の攻撃を叩き込んだ。
要が縮地を使って信玄を翻弄すれば、茜音の旋転切りに合わせて前後で同じようにクルクルと回転する。単純に攻撃力が倍の威力を誇る中々の連携ではあるのだが、それを見ていた葵が、
「車洗う機械みたい」
と、ポツリと呟いた言葉が耳に入ってしまい、光は噴き出した。
そんな二人も光は前衛二人の攻撃力や防御力を上げたり、葵の命中率を上げてサポート役に徹し、葵も信玄の集中力を切らすように矢を放ち続け、前の二人がピンチになった時にはすかさず回復を施した。




