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群雄割拠のアレとコレ  作者: 坂本杏也
恒例行事と公式行事
153/296

【十七】

 初めて受けた遠距離攻撃は大した威力では無かった。かぶとおのれの身を守ったからという事もあるが、直接身体に受けたところで体力を大きく減らすようなものでも無い。しかし、簡単に無視を出来るものでも無い、仮に目や鼻など急所をつらぬけば大ダメージに繋がる可能性もあるのだから。

 要と茜音の二人を相手に近距離戦闘を続けつつそちらにも注意をする。


 次の瞬間に二発目の矢が飛んで来る。先程よりもやや高い軌道のそれを視界の端に捉えるが、明らかに狙いが自分ではない事が気になり行く先を目で追ってしまった。その隙を突いて茜音が攻撃を仕掛けて来る。

 それは彼女が、今の技能構成に変更してから一番得意としている連撃――。

『技能:秒読びょうよみ

 呟いた瞬間に彼女の右肩の上に炎の数字『三』が浮かび上がる。

 前日、要と一緒に迷宮に潜った際にボス戦で見せた華麗な技の数々が今、ここで蘇る。

 信玄の右正面にいる彼女は刀を振り上げ、

『技能:三枝さいぐさ

 刀身が輝き三本に増えた剣先が振り下ろされ信玄の鎧を轟音と共に直撃した。それと同時に彼女の右肩の上に浮かび燃え上がる『三』の字が消える。そして、次は『二』が浮かび、

『技能:縮地しゅくち

 攻撃された事に反応した信玄が振り下ろす刀を寸でのところで回避し、背後に回ると彼を背にしたまま、

『技能:二心ふたごころ

 誰もいない空間に刀を突き刺すと、背後にいる信玄から唸り声が漏れる。

 未だどこから攻撃をされているのか理解出来ていない様子だが、

はやきこと風のごとく」

 その言葉が聞こえた瞬間、三人の緊張感は一気に高まった。背後にいるとはいえ一番接近し、連撃を放っている途中の茜音、彼女よりも距離はあるがほぼ正面に位置している要。そして、太閤検地を受けている状態であれば絶対に届かないであろう距離に立っている光さえも……。


 信玄が選んだのは光。

 どのプレイヤーからどれだけのダメージを受けているかなどは一切関係無い。ただちょうどその距離に彼が位置しているというだけで、光に高速の刃が振り下ろされ、直撃する。

「がぁっ」

 と、衝撃から自然にそんな声が漏れた。決して気を抜いた訳では無い彼のあの言葉が聞こえた時点で攻撃が自分に向かうかもしれないと気を張り集中を続けていたにも関わらず止めることも避ける事も出来なかったのだ。

 刀を持ったまま後ろに倒れる彼の姿を一番近くで見ていた葵は、あまりの出来事に声も出せずに弓を構えたまま動けない。衝撃音に反応して振り向いた要は、土煙の上がるフィールド上で彼の姿を見つけ、

「光ッ!!」

 と、叫ぶ。

 茜音も慌てて振り向いて、刀を突きの状態から引いて唇を噛み締める。本来ならば旋転切りで斬り上がり一輪刺しで兜を砕いてやろうという考えだった。そんな彼女の気持ちとは裏腹に『一』のまま燃え続けるそれを見つめ、自分にはこの状況で使えるもう一つの技能があることを思い出す。

 都合よく信玄の技能で距離も十分に取れている。

『技能:突一閃とついっせん

 突きの構えから少しだけ刀を引き、一気に信玄へと突っ込んで行くはずだった。


しずかなること林のごとく」

 仰向けで倒れる光の前に立っていた信玄の姿がスッと消えて行く。

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