【十四】
一歩前に足を踏み出した光が声を上げる。
「これなら後ろから襲われる事も無いだろうから三人で前衛やるぞ」
「おお、超攻撃的な布陣」
三人の真ん中に位置を取った要が嬉しそうに言う。
「とりあえず、最初は向こうがどういう攻撃をしてくるか見たいからあんまりガツガツ行かないように」
軽い注意を右側に立つ光から受ける。
「でも、さっきみたいにパワーアップしちゃったらどうする訳?ねえ?」
自分が大けがを負った戦闘の時に一緒にその場に居た彼女、左側に立つ茜音に同意を求めるようにして尋ねる。彼女はどう答えて良いのか口ごもっていたが、若干の苦笑いを浮かべながら、
「でも、相手は間違いなく強いだろうから、最初に様子を見るのは大事」
それで納得したのだろう要は何も言わずに頷く。
「葵にはまたちょっと負担を掛けちゃうかもしれないけど、俺達が本格的に攻撃を仕掛けるまでは体力の管理をして貰いたい。出来るだけ大ダメージは受けないように気を付けるけど、万が一の為によろしく」
「はい」
真剣な眼差しで頷きと共に声を上げた。
「どうやらここのボスもこっちから攻撃しない限りは動き出さないみたいだな」
光は言いながら自分を含めた四人全員に掛けられるだけのバフを掛け、準備万端にしてボスへと挑む。
「最初に一発大技を食らわせた方が良い?それとも何か罠的なものを仕掛けた方が良い?」
「要、罠の技能なんて持ってた?」
深く考えるように難しい顔をした茜音が純粋な疑問をぶつけるが、
「いや、無いけど。誰かあるかな?って」
「罠じゃないけど、『太閤検地』か『刀狩り』は最初としてはアリだと思う」
光が二人の会話に口を挟んでは助言をする。
「俺のデバフ系の技能でも良いんだけど、やっぱり号専用の技能なのか要のやつの方が優秀だから」
自分で言ってて少し悲しくなりはするが、戦闘をいくつかこなしていく内に気付いた事実なので仕方がない。だが、きっとそんな光の心情を察してくれたのだろう。
「でも、味方の攻撃力上げたり命中率上げたりは光しか出来ないから」
葵がフォローをしてくれる。更に、
「いつも助かってるよ」
何故か照れながらそう続けた彼女に、先程の自分の姿を重ねてしまい光までもが照れたように顔を赤くする。
「あの、ラブコメしてるとこ悪いんだけど『太閤検地』入れますよ?」
二人はその言葉にギャーギャー反論していたが、要は軽く流して、
『技能:太閤検地』
呟いた瞬間にボスである武田信玄に行動範囲制限が掛かったマークが表示される。
『技能:刀狩り』
続いて攻撃力ダウンのマークも同じように表示される。
ボスにも普通に技能が通じることに安堵しながらもゆっくりと相手の間合いを詰めて行く。中央にいる要はボスの正面に当たるように、左右にいる茜音と光はそれぞれ敵の横側に距離を取って回り込む。移動制限の掛かっているせいなのか信玄は三人に囲まれても中々動こうととせず、様子を見ようと思っていた三人も簡単には動けなかった。
「疾きこと風の如く」
ボスがそう声を上げた瞬間、刀を構えて立っていた要の目の前に刀が一気に振り下ろされた。それは彼にはかする事も無かったが、身体は自然に反応して後ろへと距離を取る。
「早いってレベルじゃない気がするんだけど、今の移動制限掛かって無かったら普通に大ダメージ受けてたよね」
引き攣った笑顔で要が言う。
「武田信玄と言えばやっぱりコレですよね」
葵は、後ろへと距離を取った彼に向かって弓矢を構えたまま嬉しそうに呟いた。




