【七】
敵グループと遭遇し足を止められた要に茜音はすぐに追い付く事が出来た。
要の後頭部越しに見えるのは先程戦闘をしていた金鉱夫が三体と鎧を被った武者が一体。何故か一番強そうな鎧武者を金鉱夫が囲むような陣形をしているのが気になる。出現率と数がランダムで設定されているエリアでたまたま起こった偶然の産物なのだろうか?
「技能:刀狩り」
と、自信満々で声を上げる彼の横に並ぶように立ち止まり刀を抜いて構える茜音。
「太閤検地もやりますか?」
目で相手をけん制しながら尋ねると、頷きと共に小さな肯定の言葉が聞こえる。だから、動き出すのを一つ遅らせて要が技能を使うのを待った。攻撃力が下げられている現状ならば闇雲に突っ込んで行ってもそう大したダメージは受けないとは思うが、相手の行動範囲が狭まり動きに制限が掛かればより安全に攻撃が出来る事は、先程の要の戦闘でも明らかであった。しかし、そんな未来予測は甘く、予測はあくまでも予測でしかない事が眼前で証明されてしまった。
要の技能を受け攻撃力の下がった四体の敵モンスターの中、奥に位置していた鎧武者が、
「ぎぃああああああ」
と、叫び声を上げて技能である旋転切りを放つと、周りを囲むように立っていた金鉱夫三人全員がダメージを受け、体力を全て奪われてしまった。
今まさに技能を使おうとしていた要は声を上げて驚き、何が起きても大丈夫なように刀を構えていた茜音も驚きのあまり動けないでいた。
「これ、なんて言うんだっけ?」
「同志討ち、かな?」
パニックになる頭を懸命に回転させ言葉を絞り出した茜音は、
「あ、でも、種族が違うから同志討ちって言わないのかも」
と、言葉では冷静を保っているような雰囲気だが、
「もう一年近く遊んでるけど、敵が敵を攻撃してるとこなんて見たことないよ?」
表情を曇らせて焦るように呟いた。
「でも、これは敵が減ってラッキーなんじゃない?」
そんな楽観的な要の目の前で、三体を一撃で屠った鎧武者の頭上にはレベルアップを知らせる表示が何度も光輝き、それに伴って辺りに効果音も鳴り響く。
「おいおいおい。そんなのアリ?」
「とりあえず、太閤検地を使って移動制限しましょう」
『技能:太閤検地』
鎧武者にその技能が掛かるエフェクトが見えると、茜音はすぐに縮地で反対側へと周り要と前後で挟んでしまう。
「多分、さっき使ってた技能は旋転切りだと思う。もしかすると、他にも技能を持ってるかも知れないから近付くときは慎重に」
茜音がそう言い終わる前に敵からの初撃が要へと振り下ろされる。が、当然移動距離が短く要自身には全く届く気配が無いので、
「全然余裕!豊臣秀吉ってやっぱり使え」
そこに続く言葉は要の口からは零れなかった。代わりに声にもならない彼の叫び声が辺りに反響し、茜音の目には鎧武者の背中越しで左肩から胸に掛けて大量の血飛沫を上げる要の姿が映っていた。




