【七】
その場に残された三人は、人が集まる所で情報収集をしようという事になり、この農村に宿屋や食事をする場所が無いかと探していた。しかし、目に入るのは住居ばかりで、
「一応、村って話でしたけど、やっぱり小さな所だと宿とかは無いんですかね?」
一番後ろを歩いている葵が呟く。そして、彼女の一つ前を歩く光がそれに答えるようにして、
「人が居ないから儲からないって事なのかな?ゲームなのに変なとこリアルだな」
笑いながら言った。
先頭を一人でどんどん進んで行く要は、一番近くにあった民家へと近寄ると、入り口を何度かノックして、
「夜分遅くすいませーん。旅をしている者なのですが、ちょっとお話聞かせて貰う事って出来ますか?」
そんな彼の行動に驚いた二人が駆け足で寄って来る。しかし、それを待たずに家の中から、
「はいはい」
と、年を取った女性の声が聞こえて来た。
ゆっくりと引かれる扉から顔を出したのは丸顔をした優しそうなお婆さんで、
「お話というのは何でしょうか?」
と、要とのやり取りを完璧にしているが、頭の上には白い文字で『お鶴』と書かれている。
柴田はその文字を見ながら感心し、この頭の文字が見えなければ人間かどうかの判別が難しいななどと考えていた。
「この近くに宿屋とか食事が出来るような場所ってありませんかね?」
要は特に気にする様子も無く普通に会話を進め、
「この辺は民家が少しあるだけで、お店のようなものはありませんでしたよね?」
お婆さんは家の奥を覗くようにそう言うと、
「なんだ?あんたら旅の人かい?」
そう言いながら、今度はお爺さんが姿を現し、
「この辺に店なんてもんはねえぞ。何が欲しいか知らんが、次の村まで行くしかないな」
「あ、いえ、別に買い物がしたい訳じゃなくて、少し話が聞きたくて」
「なんだ?例のあれか?」
お爺さんは、要から隣に居るお婆さんへと視線を移し、二人で勝手に納得をすると、
「ここの道を少し行くと、この村の代表をしておる藤兵衛っちゅう男がおる。そいつに色々聞いてみると良い」
お爺さんはそれだけ言うと、扉を閉めてしまった。
「え、ちょ、あのー」
辺りには要の声が虚しく響き、
「とりあえず、どういう事かは分からんが、その藤兵衛っていう人に話を聞きに行ってみるか?」
「そうですね!藤兵衛さんが何か知っているという情報は得られた訳ですから」
光と葵はお互いにそう言い、要を置いて教えられた道をゆっくりと歩いて行く。
「仮に宿があったとして、俺らにはどんなメリットがあると思う?」
先頭を行く柴田は隣を歩く葵に尋ねる。
「やっぱり元気になるとかじゃないですか?寝てる訳ですから」
「まあ、そうだよね。宿屋に泊まると朝になるとかってゲームは良くあるんだけど、色んな人がプレイしているこういうゲームでそれは無理だろうし、そうなると、回復とか状態異常解除とかになるのかな?」
「それで凄い高かったらどうします?」
「あー、値段か。そういえば全く確認して無いけど、俺らの所持金とかどうなってんだろ?」
光のその言葉に、先頭を行く二人はお互いの顔を見合わせて、すぐに手を動かしてメニュー一覧を表示させ、
「ステータスかな?」
体力や力など自分のキャラクターに関しての様々な数字が並ぶそこに、所持金という項目が一つだけ離れた場所に表示されていた。
「三千銭。さんぜんせんって読むのか?ぜにって読むのか?」
「読み方もそうですけど、これだけのお金でどれくらいの事が出来るのかも分かりませんね?」
「そういう事も周りに話を聞いて覚えていけって事なんだろうか」
そんな話をしながらも、どうやら目的地に到着したようなのだが、
「表札がある訳じゃ無いから、ここが藤兵衛さんの家か分かんないね?」
二人の間から顔を出した要が、目の前に建つ他の民家とは少し造りの違う大きな屋敷を見ながらそう言う。
「いや、この村の代表だから、家がデカいんじゃね?」
「あ、そうか」
と、零した要は、二度ほど咳払いをすると、
「すいませーん!藤兵衛さんのお宅ですかー?」
周りの迷惑も考えずに大きな声を上げた




