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群雄割拠のアレとコレ  作者: 坂本杏也
商人屋敷と潜入捜査
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【九】

 葵がゲームに再びログインすると、待っていましたと言わんばかりに要の声が響いて来た。

「よし、これで全員集合だね」

 嬉しそうなその声に返事よりもまず先にクスッという笑い声が漏れてしまった。

 どういうシステムになっているのか、そんな小さな音まで拾ってパーティーメンバーに音声チャットを通して伝わってしまう。どれだけ便利な時代になってもこの辺の調整というのはやっぱり難しいものなのだろう。


「え?え?何か笑う事あった?」

 要の困惑するような声が響いてきたので、

「あ、すいません。要さんがすごく嬉しそうだったので笑っちゃいました」

 軽く謝罪を入れて正直に理由を話すと、

「俺、そんなに嬉しそうだった?」

 おそらく相手は光だろう。彼に先程の自分の姿を確認するように尋ねた。しかし、葵が思っているものとは別の綺麗な女性らしい声が聞こえて来た。

「うーん、まあ、ちょっとそんな感じはしたかな?」

 集合場所へと向かっている足が一瞬止まりかけるが、意識的に足を動かし、同時に頭をフル回転させてその声の主を記憶の彼方から探し出す。この状況で要がNPCと会話をしているという事はほぼほぼ無いと考えると、葵自身が声を聞いた事のある女性プレイヤーという事になる。前日からこのゲームを始めて、出会った女性なんて数える程しかいない。

 葵の頭の中に一人の女性が浮かび上がる。

「もしかして、綱親つなちかさんですか?」

 そんな葵の言葉を聞いて、綱親は一体どんな表情をしているのか、音声チャットではそれが分からない。そして、次に一体誰が答えを返してくれるのかも。

「そうだよ。茜音が暇だって言うから誘った!」

 とは、要の声だ。

「なんか、いつの間にか仲良くなってない?」

 不思議そうに尋ねる光の声が聞こえる。

 そこからもう既に集めっている三人によって前日の夜中の話が始まり、葵はそれを聞きながらその場へと急いだ。


「改めまして、よろしくお願いします」

 葵が深々と頭を下げると、彼女も同じように頭を下げる。そして、

「今日は、お誘いいただきありがとうございます」

 要に対しての口調とは大分違い、中々窮屈なかしこまった言い方だった。それに前日に初めて会った時と比べても違和感を感じる程、言動や所作が違う。それには光も気付いているようで、口には出さないが不思議な表情で彼女を見つめている。それに気付いた葵が、

「何か、昨日とは雰囲気が違いますね?」

 そう尋ねると、

「えっと、要くんから皆さん社会人の方だとお聞きしたので」

「という事は、綱親さんは学生さん?」

「はい」

 女子二人のそんな会話に光が割って入り、

「要にタメ語使ってるなら俺もタメ語で大丈夫だよ。どうせ今に、敬語だと連携が取り辛いとかなんとか偉そうに言って来る奴がいるだろうしな」

 言って、その言葉の発信源である張本人の方へと顔を向け、楽しそうにニタニタと笑っていた。

「それなら私にも砕けた感じで大丈夫です。それと、これを機に私も光さんと要さんに敬語使わないようにします」

 光の悪戯っぽい笑顔とはまた違った照れ笑いのような表情を作って葵が言った。

 ここまで頑なに敬語を使い続けていたが、一緒に過ごした時間もそこそこ長く、二人の人となりも十分知る事が出来たのだろう。

「という事で、改めてよろしくお願いします」

 まとめのような形でそう話し、もう一度ゆっくりと頭を下げた。


 海北綱親の号を取得している茜音。彼女の得意な戦闘はしばらく無いかもしれないが、戦力としてはとても大きな仲間を加え、目指すのは今井宗久の屋敷。

17.09.24 海北綱親(茜音)の要の呼び方を要くんに修正

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