【六】
長久保の町は北の大陸の中央に位置している為、東西南北どこの入り口からこの大陸に入っても長久保に辿り着くには同じくらいの時間が掛かってしまう。それは、ほとんど寄り道をせずに馬を走らせて来た四人にも言える事で、
「……疲れた」
馬から降りて、町の入り口である大きな門がやっと目視出来る位置から溜め息交じりに要は言った。他の三人も同じように馬から降り、そろぞれが町へと入る支度をしているが、同じように疲れているのだろう。愚痴の様に聞こえる要の言葉には誰も反応してくれない。だから、
「そういえば、俺の師匠が瞬間移動みたいな事してたんですけど、それっていつ頃使えるようになるんですか?」
そうゲームの先輩である五右衛門に尋ねた。
前日に海北綱親と迷宮巡りをした際に彼女が使っていた一瞬にして迷宮がある場所へ移動したり、パーティーメンバーのいる町に移動したりする術のことである。
「ゲームをやってりゃ、その内手に入るぞ。まあ、一度行ってないと使えないから結局は初めて行く町には自分の足で行かなきゃなんないけどな」
「じゃあ、今はあんまり使い時が無い感じか」
二人のそんな会話に、
「でも、ここでの調査が終わって、クエストの報告に戻る時に便利ですよね?」
葵が割って入った。
確かに、今日のこの移動をもう一度するとなると、中々に骨が折れる。と、思うのは他三人の共通認識ではあるだろう。しかし、どうすればその手段を手に入れられるのかを知っている五右衛門は、
「一応、それが無くても一度行ってる場所なら移動する術があるんだけどな?」
「え、そうなの?」
と、食い付いたのは要で、
「各町には籠屋ってのがいてな?そいつらに金を払えば、一度行ったことのある場所ならどこでも連れて行って貰えるんだよ」
詳細を説明してくれた五右衛門にグッと近付いて、
「俺、時代劇とか見てちょっと乗ってみたかったんだよ!あれ。つり革みたいなの持ってさ、舌噛まないように布噛んだりしてさ」
彼の言った事は両方とも正しく。人が担いで移動する手段の籠は、速度が上がれば上がる程揺れが大きくなり、中での居心地は悪くなる。それを少しでも解消しようと身体を支える為に掴む紐のような物や揺れの衝撃で舌を噛まないように布を口にくわえるのだが、
「残念ながらそこまでリアルじゃない」
苦笑を見せながら五右衛門が言う。
「目的地までの距離で値段が変わるんだが、実際に籠に乗るって事は無くてな?金を払って気が付いたら目的の場所に着いてるって感じだよ」
それを聞いて要は少し落ち込んでいるようだったが、光は心の中で納得していた。
人が走って移動するよりも明らかに馬を飛ばした方が早い訳で、お金を払ってまで乗り心地の悪く遅い移動手段など誰も使わないだろう。料金を支払う以上、ある程度の利点が無ければならないのだから。
しばらくそんな籠の話で盛り上がっていたが、先程の苦笑いからずっと浮かない表情をしていた五右衛門は黙って三人の会話に頷くなどして反応していたが、話に少し空白の時間が出来ると、何かを決意したそんな顔で、ゆっくりと口を開いた。
「申し訳ないが、今日俺が付き合えるのはここまでになりそうだ」
本当に申し訳無いと思っているのが伝わってくる。が、彼にも当然リアルの生活があり、ゲーム内でも色々な用事や都合がある事は三人も理解している。だから、
「あんまり気にしないでください。ここまで色々お世話になりました。本当に助かりました」
光が三人を代表して言った。更に、
「今井宗久の調査は、僕たち三人で進めても大丈夫ですか?」
五右衛門は笑顔を作ってゆっくりと二度頷いた。
17.09.30 誤字修正




