【三】
「フードを被って杖を振り回して炎や氷を操るって感じではないらしいけどな?まあ、所謂陰陽師って言われてる連中の号なんかがそれに当たるって話だ」
不満そうにしている三人にフォローを入れる五右衛門は、風の噂で聞いたという昔の記憶を頼りにその後も詳しく話をしてくれた。
「式神っていう召喚技能が使えたり、自然の力を利用した不思議な技能が使えるって話だ」
それを聞いて要と葵は、
「それくらいなら良いかな?」
と、納得していたが、
「陰陽師ねえ……」
難しい顔をしたまま独り言のように呟いた光だけは、まだスッキリしていないようだった。しかし、
「まあ、俺らが使ってる技能だって魔法みたいな効果が乗ってるもんがある訳だから、ちょっとくらい良いだろ?ゲームなんだし」
五右衛門のそんな言葉に光は、右手を仰ぐように振りながら、
「あ、いえ、違います。迷宮でそういう技を使う敵が出て来たらどういう風に倒そうかな?って考えてただけです」
笑って言った。
「それでどうするんだ?」
再び五右衛門が口を開いた。
短い言葉ではあったが、その場にいる全員がこの後の予定を聞いている事を理解した。
本来ならば望月から芦田、長久保と進んで、今頃は既に今井宗久の屋敷を尋ねているはずだった。
「さっき言ってたお寺では今日は何もやってないのかな?」
要が言うが、当然誰もそんなことまで把握出来ている訳が無く、
「一度見に行ってみますか?何もやってなかったとしてもお寺なら、これからの旅の安全や潜入が上手く行くようにお参りしても良いですし」
そんな葵の発言に流されてしまい、四人は町の外れに建つ浅間神社へと向かう事になった。
目の前に現れた大きな鳥居は真っ赤に塗られていて、一番上で横なっている笠木は四人の視線よりも遥か上に位置している。この鳥居だけでもこの神社が大きなものであることが伺える。
「お城とかもそうだけど、こういう建物は凄い本格的だよね」
鳥居の全体像を見る為に顔を上げている要は、少々間抜けな顔をしたままそんな感想を零していた。しかし、そんな彼の姿を笑える者は誰一人としていない。何故なら、他の三人も似た様に顔を上げては、そんな荘厳な佇まいをしている鳥居を含めた神社の景色に圧倒されていたからだ。
「とりあえず、鳥居は立派ではあるけどね?神社の中に入ったら、あれ?ってなるかもよ」
要の言葉に笑って返す光の隣で、
「浅間神社って書いてありますね?」
同じ体勢のまま笠木の下、鳥居の中心部からやや上に備え付けられている額束に書かれている神社の名前を葵はゆっくりと読み上げた。
「どうやら芸事の神様が祀られてるって話だけど、生憎俺には関係が無いから今まで来た事無かったんだけど、予想以上に立派だし、観光名所みたいになってるんだな」
五右衛門の言葉通り、ボーっと鳥居を見つめる四人のそばを他のプレイヤーやNPCが同じように行き来し、鳥居の向こうに広がっている境内にも複数の人影が確認出来る。
「芸事の神様がいるから出雲阿国は、ここでイベントをやろうってなったのかな?」
要の疑問に、
「そうかもね?神様の前だったら大成功しそうだしな」
興味が無いのか、光は適当に答える。
「とりあえず、中に入ってお参りだけでもしましょう?」
先頭を歩き出した葵に続いて男三人も中へと入り、旅の無事とクエストが成功するようにお参りをした。




