【二】
「そんな事言って良いのかな?」
光としては要には聞こえないように言ったつもりであったが、もしかすると号を取得すると耳まで良くなるのかもしれない。わざと顔を光に近付けながら言った要の表情は何とも形容しづらい顔をしていた。しかし、これだけは言える。豊臣秀吉の号を手に入れた彼は明らかに調子に乗っていた。
「ドヤ顔で何よ?」
「ドヤ顔にもなるよ。俺は新しい技能を覚えたんだよ?」
少々動きや表情が癇に障る。思わず空いている右手が飛び出してしまいそうなところではあるが、光はそれをグッと我慢して、
「馬に乗りながらどういう技能があるか確認した?俺もちょっと興味あるから教えてよ」
正直に言った。すると、葵と五右衛門も二人に寄って来る。どうやら二人も豊臣秀吉の技能に興味があるようで、要から発表されるのを楽しみにしているようだった。
表情や動きが誰にも突っ込まれない事に不満はあったが、要自身も新しく覚えた技能を早く説明したいという欲が溢れてしまっていたので、
「コホン」
本物の咳払いではなく、文字通りコホンと小さく呟きポーズだけ一丁前に作って、
「まず一つ目は『太閤検地』」
「効果は?」
光が聞くと、要はウインドウに表示された説明欄を目で追いながら、
「戦闘中に相手の移動できるフィールドをしばらくの間、制限することが出来る。だって」
「うーん、それ聞いただけじゃ良く分かんないけど、使える気はするな」
要はウインドウに触れ、次の技能の詳細を開く。
「多分、これは強いと思う」
そう前置きをして、
「『刀狩り』。相手の攻撃力を下げる」
「説明が若干雑な気がするけど、まさに名前通りの技能だな。ってか、俺のデバフ系と被るんだけど」
思い掛けない事に光は頭を掻きながら困った表情をするが、嬉しそうに説明をする要を見て気持ちを改める。重複が可能だという話になればより効果が大きくなるだろうし、仮にそうでなくても二人で分担が出来るというのも利点ではある。
「他にも『人たらし』ってのがあるけど、これは使う技能じゃないっぽい」
「やっぱりその武将に関係ある事だったり物だったりが技能になってるんですね」
こういう細かいところも歴史好きの葵にとっては嬉しくなるポイントの一つなのだろう。更に興味を持った彼女は、五右衛門へと向かって、
「五右衛門さんは、どういう技能があるんですか?」
尋ねた。
「俺のはそんなに派手なのは無いぞ?盗賊系の技能と忍び系の技能が取得し易いって事があるくらいで、固有の技能も『五右衛門風呂』っていう炎と水の属性に強くなるパッシブだけだしな?」
要からの流れで聞いていた光にも驚くような情報がサラッと耳に入り驚いた。
「五右衛門さん、このゲームって属性があるんですか?」
「ああ、武器や装備に属性付与ってのが出来るし、プレイヤーの中には魔法みたいなモノを使えるやつもいるって話だぞ?」
『魔法??』
三人が同時に食い付いた。それもその筈である。ここまで一貫して戦国時代の雰囲気で通して来た印象だったのだが、ここに来て突然の魔法なのだから。だから、必然的に口から出て来る言葉だって、
「ゲームとしてはアリだと思うけど、世界観的にそれはどうなの?」
他の二人も光と同意見なのか、小さく頷いているのが見えた。
17.08.14 フリガナ修正




