【十二】
「大切な技能ポイントをそんなのに使ってるの?」
馴れ馴れしい口振りで要が不思議そうに尋ねた。
それも当然の事かもしれない。要を含めた三人は昨日始めたばかりの初心者プレイヤーで、レベルも大して高く無い。レベルアップに応じて得られる技能ポイントにも限りはあるし、始めたばかりという事で使ってみたい技能、見てみたい技能が星の様に無数に存在しているのだ。
しかし、
「まあ、普通に遊んでるプレイヤーから見たら要らない技能だと思うかもしれないが、俺みたいなちょっと変わった楽しみ方をしてる連中には有難いんだよ」
五右衛門はそう言って、要に詳しく説明を始めた。
「お尋ね者であるが故に目立つのはご法度だろ?号なんかが付いてりゃ更に目立っちまう。俺だって簡単には捕まりたくないし、出来れば無駄な戦闘なんかは避けたい。まあ、周りの人間と自分自身、どちらも立ててくれる素敵な技能って訳だ」
少し良い風に言っているが、要にはあまり通じていないようだった。彼は、眉をしかめたまま納得いかない表情を作って、
「それなら、お城で捕まってる時もここまで移動して来る時もその真田八郎でいれば良かったんじゃないの?」
「この状態だと使える技能に制限が掛かるんだよ。だから、使うタイミングってのはかなり限られるが、今回ここで使えるんだから、取得しておいて良かっただろ?」
言葉で要を納得出来たのかは甚だ疑問ではあるが、自信満々の表情で言い切った五右衛門に要は言葉を返すことは無かった。が、その代わりに、自分はしっかりと技能を把握して厳選して取得して行こうと心に刻みながら頷きを返した。
四人はゆっくりと橋へと向かいながら、
「しかし、情報を聞き出すなんて簡単に出来る事じゃ無いぞ?」
五右衛門は自分の前を歩く光に言った。
身体の大きな五右衛門は目立つからという理由で後ろへと回され、先頭を行くのは光と要、そしてその後ろを五右衛門と葵がついて来るという感じになっている。
「だから、やっぱりお金を多く払ってさ!」
先程と同じ案を要が意気揚々と上げるが、
「いや、それは止めとこう。逆に怪しまれそうだ。お金は言われ分だけ払って、そこからはとりあえず初心者アピールでもしながら会話してみるよ」
光は言って更に続ける。
「あ、五右衛門さん。今井とあいつらの繋がりっていうのがどういうモノか具体的に分かりますか?」
「繋がりがどういうものか?」
あまりピンと来ていない五右衛門に、
「例えば、今井がスポンサーというかパトロンになって金を出してるとか、逆にあいつらが今井に飼いならされているとか。どちらが強い弱いとか、ある程度関係性が分かれば話の持って行き方のヒントになると思うんですけど」
それを聞いて五右衛門はしばらく黙ったまま考え込んでいたが、
「うーん、あくまで噂の範疇ではあるんだが、あの第六天魔王っていうやつらは信長の号を持つ者を誕生させたいらしいんだ。で、今井宗久ってのは史実から見ると、信長に重宝された商人らしいんだ」
「つまり、自分の利益の為にも早く信長に誕生して貰いたいと?」
「まあ、そうなるな。だから、ある種の協力関係になるんじゃないか?今井自身も第六天魔王の連中も信長誕生を待ちわびてるって事だからな」
光と五右衛門の会話が盛り上がってるタイミングで葵が割って入る。彼女は、まず会話の間に入ってしまった事を一言謝罪し、
「でも、織田信長の号を持った人が出たからって今井と関係を作るかどうかは、本人次第になるんじゃないですか?」
「だから、今の内からある程度協力的な姿勢を見せて、自分は使えるプレイヤーだってアピールしてるんだろう。第六天魔王から信長の号を取得するプレイヤーがいつ出ても良い様にな?」
「……なるほど」




