【十】
再び町の入り口へと戻った光と五右衛門は、謝る要を見て苦笑いを浮かべた。そして、葵が聞いていた彼が消えた理由を簡単に聞くと、話は先程光が出会った男の話へと移って行った。
やけに偉そうな紫色の着物のプレイヤー。
「要の姿が消えてしまったから、話が途中になってたが」
五右衛門は、そこで一度言葉を止めて要を見る。見られた彼は、気まずそうに眉を指で掻いていた。
「光が橋のとこで出会った。あれが、例の第六天魔王の連中だ」
光以外の二人は直接見た訳では無いので、あまりピンと来ていないのだろう。要に至っては何の話か分かっていないのかもしれない。しかし、話はゆっくりとだが、確実に流れて行く。
「橋を渡る人からお金取ってましたよね?」
そんな光の言葉に五右衛門が黙って頷く。
「最初に見た時は別におかしいとは思わなかったんですよ?橋の通行料があるのかな?って思っただけだったんですけど、商人のNPCが橋を通る時にお金を徴収してるのがプレイヤーだって分かって」
「プレイヤーがですか?」
葵が聞く。
「そう。普通のゲームならプレイヤーからNPCが通行料を取るって事はあると思うんだけど、プレイヤーが橋を渡る全ての人からお金を取るなんてあるのかな?って不思議だった」
そこで五右衛門が再び入って来た。
「さっき言っただろ?この辺に住み付いた奴らがいるって。それがあの第六天魔王の奴らだ。あいつらが金稼ぎの為に橋を通る人間から通行料を無断で取ってるんだよ。大人しく払えば何事も無く向こうに渡れるらしいんだが、断ると実力行使で来やがるから質が悪い。高額じゃないから払う奴が大多数だろうけど、元々はお金の掛からない交通手段だからな……」
「それが橋の方の短所って事ですか?」
光の言葉に五右衛門は黙って頷く。
「でもさ、せっかくゲームやってるのに橋の上でお金を徴収してるだけって何か切ないよね?面白いのかな?そんなの」
黙って話を聞いていた要が自分の考えを言うと、
「まあ、ゲームの楽しみ方は人それぞれだし、仲間と何かをやってるのが楽しいって人もいるんじゃない?もしくは、もうある程度クリアしちゃってやる事が無いとか」
光が返し、
「あ」
と、途中で何かを思い出したように馬鹿みたいな声を上げると、
「さっき五右衛門さんが言ってた事と同じような事を第六天魔王の人達も言ってたんですけど、お金を払うのを断ったりすると実力行使に出るみたいですけど、NPCは分からないですけど、プレイヤーに攻撃とか出来るんですか?」
「ああ、所謂PVPってやつだろ?」
話を振られた五右衛門は、自分の髭を触りながら呟く。
「お前さんらは、本庄の方から来たんだろ?」
それに答えるようにして三人がほぼ同時に首を縦に振った。
「それなら、ここまでの道中はPVPが出来るエリアってのはここが初めてになるな。このゲームのフィールドってのは基本的にそういう事は出来ない所がほとんどなんだけどな?たまに合戦場のような場所であったり、ああいう橋なんかはPVPエリアになってんだよ」
それに食い付いたのは要だった。
「合戦場なんかはPVPっぽいとは思うけど、どうして橋が?」
「ん?ああ、合戦場は多人数のエリアなんだけど、橋ってのは少人数のそういう場所になってるんだよ。昔から橋での真剣勝負みたいな有名な伝説とか逸話が多いだろう?それに引っ掛けてるんじゃないか?」
気の抜けた声を上げながら、分かったのか分からないのか、頷いていた要にもう少し分かり易く説明したかったのか、葵が彼の隣へとゆっくり移動して来て、
「弁慶って義経の勝負なんかも橋の上でしたし、ね?」
「ああ、橋の手すりのとこからジャンプしてるのとか見たことあるかも!」
声を上げる。
「時代的に戦国時代より少し昔になっちゃうんですけどね」




