【八】
要を探し始めて数分。
北の大陸へと渡る為に港周辺は多くの人で賑わっていた。帰港してきた船から降りて来る乗客やその船に今度は乗り込む人。そして、船の乗組員から貿易の品目的の商人たち。中でもとりわけ暇そうにしている人間を探しては、五右衛門は聞き込みをしながら要捜索を続けていた。
彼は、暇そうに煙管をふかしていた男性に話を聞いた後、ふと先程までしていた大事な話が途中になってしまっている事を思い出した。
「あんまり張り切り過ぎて余計な所まで足を運ばなきゃ良いが」
五右衛門は、要自身もそうなのだが、何も説明をしていなかった二人。光と葵も要を探す流れで橋へと足が向いてしまわないかという事を心配していた。
五右衛門の話していた第六天魔王は、現在、この町から北の大陸へと繋がる『太閤橋』で関所のような物を作ってNPCやプレイヤーから渡橋料と呼ばれる渡る為の料金を勝手に徴収しているのだ。そして、酷い時には盗賊まがいのような事をして無理矢理金品や衣服、装備や道具などを奪うという略奪行為まで行っていた。
橋には常に彼らが居る訳では無いので、運が良ければお金は払わずに北の大陸へと渡る事が出来る。仮に遭遇したとしても、
「素直に提示された料金を払ってくれれば、それで事は済むんだけどな」
焦った表情を見せた五右衛門は、すぐさま橋の方へと向かい走り出した。
「流石に勝手に橋を渡るような事は無いと思うが、向こうを担当してたのは光だったか?」
駆けながらも辺りの様子に注意を払いながら町の中を走る街道へと戻り、太閤橋を目指す。
そんな彼の後ろ姿を町の外から見つめていた葵は、声を掛けようとして止めた。
どう見ても要が見つかったという感じでは無いし、理由は全く分からないが、どうやら焦っているようなのは、遠目から見ても明らかだったから。
「どうしたの?何か面白いものでもあった?」
そう後ろから声を掛けられ、葵はハッとして振り返った。そこには声の主である要が立っていて、笑顔を作って手を振っていた。
どうしてそんなにも自然な振る舞いが出来るのか理解し難いが、葵は静かに深呼吸を挟んで、
「要さん、何やってたんですか!?急に居なくなっちゃったからみんなで探してたんですよ!」
「え、そうなの?トイレ行きたくなったんだけど、皆真剣に話ししてたから遠慮して黙って行ったんだけど」
困ったような表情の要に、自分の考えを改めながらも、
「まあ、そういう事だったら仕方ないかもしれないですけど、これからは一応声掛けて下さいね?みんな、心配しちゃうんで」
そう言って葵は眉をへの字にして苦笑いしていた。
「なんか、ごめんね」
しっかりと反省している要の姿に安堵した。
「とりあえず、光さんと五右衛門さんが探しに行っちゃってるんで、戻って来て貰いましょうか?」
「そうだね。二人にも謝らないと」
葵は音声チャットのウインドウを開いて、光、五右衛門と書かれたそれぞれの文字に軽く触れた。
17.08.03 誤字修正




