【三】
「データって事は自分がいなくなるって事?」
要が興奮気味に返したが、話を聞いていた光と葵もウインドウを開いて自分達の必要な装備品を探す作業をしながら耳だけは二人の会話に集中させていた。
「いや、キャラクターとしての自分は残ったままらしい」
五右衛門も自分での体験ではなく、どこからか流れて来た噂話なのか、実際に体験した人に聞いた話なのか、そんな口振りで語った。
「無くなるのは、集めた装備品やアイテム、それまで貯め込んだお金に取得した技能と号だとさ」
「それってこのゲームのほとんど全てじゃん」
目を丸くする要は改めて驚いたようで、先程よりも小声になって、まるで自分自身に言い聞かせるように呟いた。しかし、そんなリアクションが面白かったのか、要の姿を黙って見つめていた五右衛門は再び口を開き、
「それに加えてゲームにログインが出来なくなる事もあるみたいだな」
それを聞いた要は隣に座っている五右衛門の顔をしっかりと見つめ返し、何かを黙って考えていたが、それがまとまると、
「じゃあ、五右衛門さんもあのままだったらゲーム出来なくなってたかもしれないってこと?」
自分が心配されている事に良心が痛くなった五右衛門は、上げた右手で申し訳無さそうに頭を掻いては、
「最初に言ったが、酷い場合はだからな?犯した罪の大きさによってペナルティが変わるんだよ。軽いモノだと罰金だったり、武器や防具の没収だったりな?」
彼は右手を止めて元の位置へと戻すと、
「プレイヤーに対しての罪は重いらしいけど、どういう風になってるかは実際分かんねえな。俺はNPCから金品を奪った訳だから、そんなに重い罪にはならないとは思うが、数日間のログイン停止と罰金とかだろうな?まあ、それも捕まって処刑されればの話になるんだけど」
五右衛門は自分の知っている事を全て話し終え、溜め息のように大きく空気を吐き出した。
「なんだ、意外と大したこと無いんですね」
心配して損したと言わんばかりの要は、笑顔を作って五右衛門を見つめていた。その視線が居心地悪く、耐えられなかった彼は、
「そんな事より、これからどうするんだ?北の大陸に向かって、直接、今井宗久の店に出向くのか?」
無理矢理話題を逸らし、わざわざ念を押す様にして、正面に座る光と葵に尋ねた。
作業の手を止めた光は、
「五右衛門さんさえ良ければ、その店に案内して貰いたいです。僕たちは今井宗久の店の場所も彼の顔すらも分からないので」
「まあ、案内くらいなら問題無いが」
返事をした五右衛門はとても歯切れが良いとは言えない口振りであった。その理由は光も察していたようで、すぐさま安心させるように次の言葉を作った。
「五右衛門さんは向こうに顔がバレていると思うんで、本人に直接会ったり周辺を調査する時は僕たち三人がやります。五右衛門さんには、きっと五右衛門さんにしか出来ない仕事があると思うんで、北の大陸に着くまでには何か探しておきます」
苦笑いで言った光に対して、
「まだ何をやるか決まってないんだな」
と、ツッコミを入れた五右衛門もつられるようにして笑顔を零した。
「はい。とりあえず、北の大陸までの先導役という事でお願いします」
頭を下げる光を見て、要と葵も同じように頭を下げるが、そこは五右衛門にも思う事があり、彼も頭を下げた。
「その先導役、しっかりと果たさせて貰うよ」




