【二】
それに答えたのは五右衛門だった。彼は、雑談の為に向けていた視線を光へと向かわせると、
「ここまでやって来る道中でNPCと関わる事もあったと思うが、話している時のリアクションであったり、返事などもそうだが、本物の人間と何も変わらないくらいの事が出来てる。こっちがこういう話をすればどういう事が返って来るのかがしっかりと設計されてる訳だ。どういう理論でそんな事が出来てるのかは、専門家じゃない俺には分からんが、もしかすると、頭の中で色々無駄な事を考えてしまう人間よりもプログラムで動いてるNPCの方が簡単に他人に影響されてしまう可能性はあるな。人間でも他人に影響されたり、中には洗脳なんてされる奴がいるくらいだからな」
それを聞いていた光が言う。
「でもそれってバグって事になるんじゃないですか?」
バグとはプログラムの中に存在する製作者の意図とは異なる誤りの事である。所謂不具合と呼ばれるもので、ゲームで使われることが多いがゲーム用語ではない。
「あくまでも俺の考えだからな?」
先程の発言に念を押した五右衛門が光をなだめるようにして言った。
姫に頼まれたこのクエストは中々に難易度の高いものなんじゃないか?と、三人が三人とも考えていた。もしも、今井宗久という商人が犯人だった場合。彼には簡単に近付けなくなってしまう。しかし近付かなければどうして殿様の様子がおかしくなってしまったのかも調べることが難しくなる。
理由が理由だったとはいえ、殿様にも会う事が出来なかったのは痛い。今現段階で、手掛かりと呼べるものがほとんど無いのだ。流石に城下町で、
『殿様がおかしいんですけど、何かご存じですか?』
などと、町人に聞けるわけも無い。
「とりあえずの手掛かりが今井宗久だけですし、北の大陸とやらを目指して進んでみましょうか?」
自信無く光が言うと、隣に座る葵が黙ったまま頷いてくれる。しかし、
「ここの町にもクエストとかあると思うけど、それはどうするの?」
要が言った。
この町に辿り着いてからは、流れるように城まで行ってしまった為に城下町で聞き込みなどもしていない。が、自分達を牢獄に入れた城の関係者が城下町をうろついているとマズいので、表立った行動も簡単には出来ないのが事実だ。
「一旦ここを離れて、お城の問題が解決して、俺達の限り無く白に近い灰色の罪を真っ白だと証明されてから戻って来て進めよう。万が一、もう一度見つかって牢獄に入れらたらそれこそ無実だろうが何だろうが問答無用で処刑にされるかもしれない」
「でも、お姫様が出してくれた訳だからもう大丈夫なんじゃないの?」
「本当に処刑する気なら、次はそのお姫様に邪魔されないようにササッと処刑されるんじゃない?」
そう言われた要は、納得したようで、
「処刑がどういう事になるのか分からないけど、最悪な事は避けた方が良いね」
苦笑いで言った。
「もし、どうしてもクエストを済ませたいなら変装って手もあるが、まあ、無理はしない方がいいな」
五右衛門からのそんな提案があった。彼の正面の葵は、
「五右衛門さんも変装して生活してたんですか?」
と、尋ねると、
「まあ、俺も泥棒なんてやってたからな。リスクを出来るだけ避ける為にそれくらいはな?」
こちらも苦笑いを零して言った。
四人で変装をしてクエストを探すという事にはならなかったが、これからの事を考えて、せめて顔だけでも隠せる物があった方が良いだろうという話になり、顔を隠せる衣服や装備品を闇市場で探した。その最中、
「五右衛門さんは、処刑されるとどうなるか知ってる?」
早々に安いフードのような物を購入した要が尋ねた。牢獄に入れられてから何度も言ってきた疑問をようやくここで解消しようとしたのだ。
五右衛門は首を縦に振って頷きながら、
「色々あるらしいけどな。一番酷いのはデータが無くなるらしい」
衝撃的な一言が飛びだした。




