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あぶらかたぶら孤独購読

 背えの小さいひとりの親爺がことりことりと話しやす。わらっちまうほど大きな声でげへらげへらと歌います。

「ああ、じょーうんちゃあぶっけんごったん、見たらいけねえごますだれ、歌えやごまの海豹だ。じょーうんちゃあぶっけんごったん、見たらいけんえごますだれ、歌えやごまの海豹だあ」

 陽気なおとっつぁんは黙ってらんない、ありゃあ頭がいってんだあ。ありゃりゃ参ったなこんちくしょう。えれえことになりましたなあ、なんだってんだよええ、こりゃあ、まったくもって意味がわからねえ。わたしだってわかりゃあしません。いったいだれがいるのでしょう。わたしがいて、親爺がいて、おとっつぁんがいて、ありゃあ、もうわかりやせん。ここはどこでしょう。彼はだれでしょう。女はいるのか、老婆はいるのか、妖精がいるのか、妖怪がいるのか、わかりゃあ、しません。これはきっと夢でしょう。夢だったらなんでもありです。だって、そりゃあ夢ですから。何妙法蓮華経なんて唱えたってかわりゃあしません。嗚呼、なみあむだぶつ、涙お陀仏。なみだちょちょ切れ、ベッキーお涙、涙ちょーだい。はあ、どっこいしょーどっこ。いしょー。

 ああ、ええ。笑う門には福来るなんてえ世の中の人はいいますが、それは本当なんですかねえ。ええ、だって、いつもいつも笑ってるやつってえのはへらへらしているって相場が決まってるじゃねえですか。わたしゃあねえ、へらへらしてる奴は信用してないんですよ。だって、そうでしょう、へらへらしてるやつは現実がよおくわかってねえからへらへらしてるんでえ、ござんしょう? ええ、あたしゃしってるんですよ。へらへらして笑ってるやつはやっこさん、あたしのことをなんとも思ってないんです。ええ、こりゃあほんとうですよ。男でも女でもそう。へらへらへらへら愛想笑い。愛想笑いってえのは変な字を書きますよねえ、愛に想うですからねえ、たいそうなもんですねえ

。ええ、愛なんて、想いなんてそこにはねえっていうのにねえ「、ええ」まったあくまったく。だいじょうぶ、とか、好きじゃない、とか人様の事かってに言ってくれやがってねえ、ええ、あっしはながいこと

わけのわからねえ念仏唱えていきてりゃいますけれどねえ、ああ、女々しいっ女々し、さびし、わびし、出家なんていいことありゃあしませんで。仏さんといっしょになるくらいなら、あったけえ人肌と結ばれてえでござんしょう。嗚呼、わらえや一本杉野松。松平の小判小さな藩。ああ、いけねえ、いけねえ。世俗ったってえ、わらえねえ。ああ、ここはどこなんでしょう。どこなんでえしょう。とにもかくにも笑いやしょう。嗚呼、笑いやしょう。誰にいうでもないことを言ってや歌い、言ってや歌う。大判小判がざっくざく、、そんな話はありゃあしない。笑う虚しさざっくざくうざっくざくう。ええ、意味なんてないんですよ、すべてのことにないのです。だってら笑って死にましょう。笑い地獄に泣き地獄、

震えて歌って死にやしょう。おっちんじまった先の海。見えぬ浅瀬の水面側。ばってんしょうちの生き地獄あどっこい。ひょろひょろぴーのぴょろり。だん。だだだん。


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