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仮面の夢

『ふと目を覚ましたら、見たことない世界の住人に生まれ変わっていた』


まぁ、創作物にはよくあるパターンだろう。

特にラノベやらアニメやらゲームには。


かくいう彼もそういうパターンだ。

ごく一般的な家庭に生まれて、普通の学生として平凡な生活を送っていた。


きっかけは特になかった‥‥はず。


学校から帰って家で寝た。


ただ、その日の夢の中に出てきたやたら美人な女性が手を振りながら言った一言だけは記憶に残っていた。


ーー『向こう』でも頑張ってください


そして目を覚まして、目に入る見知らぬ天井にやたら小さい自分の手足。


一発で気付いた。


ーーああ、これが異世界転生ってやつですか、そうですか。


アニメやらゲームやらが好きだった彼は大いに喜んだ。






彼が生まれ変わった先は小さな村で宿屋を経営する夫婦の元に生まれた一人息子だった。


彼の名前はレグナス、レグナス・アウレア。

容姿はこの世界では珍しい黒目に少しだけ青みがかった黒髪に黒目。


見た目は中の上くらいだった。


両親が住んでいた村の名前はフォルラ村。

エレイボス帝国という国の端にある小さな村だ。


そこで彼は13歳まで過ごした。


まぁ、転生したって割には特にのんびり過ごしていたはすだ。


村の子供で俺の幼馴染みの三人と遊んで、家の手伝いをして、村の人達も凄くいい人達ばかりで、それはそれは平凡に暮らしていた。


幼馴染みの三人とは色々な話をした。


ーー15歳で俺達も大人だ。そしたら冒険者になれる。そんで、すげぇ奴になって村のみんなをもっと笑顔にしてやろうぜ!


幼なじみの中でリーダー的役割をしていた幼馴染みがそう言った。


ーー凄い奴ってなに。馬鹿みたい。でも、みんなを笑顔か‥‥いいかもしれないわね。


可愛いのに、無駄にツンツンした幼馴染みがそう言った。


ーーうん、その時は私も付いてくよ。レグ君はどうするの?


将来はおっとり系美人か天然か、なんて思っていた幼なじみがそう言った。


そして、彼はこう言った


ーー分からない。今ののんびりした生活が好きだよ。けど、そういうのも悪くないって思える。







でも大抵、そういう平和な日常が崩れるのはある意味テンプレのようなもので。


あっさりと崩れ落ちてしまう。


彼らの村に怪物‥‥魔物が襲ってきた。


地域によっては魔獣と呼ばれるそれは普通の人ではなかなか倒すこと叶わない存在だ。


だからこそ『冒険者』なんて職業が存在しているのだ。


まだ、底辺の魔物なら村の男達でなんとかなったのかもしれない。

けど、村に現れたのは通常の冒険者では歯が立たないクラスの奴だった。


村なんて生きていれば幾らでも作り直せる。


当然、村の住人達は全員逃げた。


彼も逃げた。


けど、幼なじみ達が取り残されていた。


彼は気付いたら、練習用の木剣を持って村へ走っていた。







彼が村へ着くと案の定、見知った顔が魔物の前でへたり込んでいた。


彼は地面にあった小石を投げて魔物の注意を逸らして幼馴染達を逃した。


その時に何か言った気がするが何を言ったかは覚えてない。


ただ、何故か異様に満ち足りた気分だったのは覚えている。




案の定、子供騙しの木剣なんてものは通用する筈もなく、木剣ごと身体を引き裂かれた。


ーーああ、死ぬんだな。


彼がそう思った時だ。


銀の閃光が走って、魔物が倒れた。


銀の閃光は一人の青年だった。


青年の持つ剣は涼やかな男を立てて鞘に入れられる。


酷く美しかったそれを最期に彼は意識を失った。






結果だけいうと彼の命は助かった。


けど、彼の故郷はもうなく、新しく立て直した村では死んだことになっているそうだ。


戻るのはなぜか躊躇われた。


とりあえずレグナス・アウレアスは死んだ。

それだけは事実だ。


彼を助けた青年はエルヴェルトと名乗り、彼に提案をする。


ーー戻る場所がないのなら、結社に入ってみないか?


自然と道は決まり、答えを得た。


彼は名と共に過去を捨て、前世の名を名乗る。


例えこの道が間違っていようと引き返さない。


この青年に恩を返す為。


居場所をくれた『主』の為に。


強くなるためにーーー。








「うっ‥‥‥」


窓から射す光で彼‥‥いや、カムイは目が覚める。


意味のわからない空間であろうと朝日が射すこの空間は自分とその仲間達が敬愛する『主』の力によるものだろう。


ーーまた、ここから結社の一員としての1日が始まる。









起きて早々にカムイはクレロードに呼び出された。

用件は新たな任務とそれに連なる情報の受け渡し。


任務地「レフェリア王国」。


任務内容「王都ライテルにて魔剣の回収」


場所及び所有者は不明。


よく調査した上で任務にあたるべし。







「新しい任務か?」


昨日も来た広間‥‥回路の間で用意をしているカムイにエルヴェルトが話しかける。


「まぁ、はい。任務でライテルに」


「そうか。今回は俺は同行しないが無理はするなよ」


「ははっ、大丈夫ですって。ヤバくなったら逃げますから」


「ふっ、そうしておけ。‥‥それにしてもお前が結社に入ってから三年か」


先程とは少し雰囲気が変わるエルヴェルト。今朝、自分の過去を夢で見たばかりだったカムイは少しだけ動揺した。


「ちょっ、どうしたんですか?急に」


「なに、ふと思っただけだ。気にするな。ああ、あと今回は一人だ。あまり、あれは使うなよ。それとーー」


カムイが手を翳すと右手に嵌められた指輪から黒いモヤが広がっていきやがて大きな穴を造る。



「守るべき者を見つけろ、ですよね。まぁ、わかりました。とりあえずいってきます」


「ああ。いってこい」


そしてエルヴェルトに見送られながらカムイは黒い穴の中へと歩いていった。







mission 01 「魔剣回収」 スタート。


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