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もう一度君に  作者: サクヤ
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入学

「…ん」


 朝になり僕は目を覚ます。さっきまで夢を見ていた。伊織から引越しの電話があった時の。もう伊織が引っ越して数日が経っている。そして今日は入学式だ。僕がこれから通う中学は僕が通っていた小学とほかに2校の生徒が集まる。大体1クラス100人ぐらいだそうだ。


 僕は朝食を食べ終え、自室に戻ると制服に着替えると家を出る。家を出ると無意識に隣の家に視線が向く。だがその家から伊織が出てくることはない。僕は寂しさを感じながら学校まで歩いていく。だがこの寂しさはいつまで続くのだろう。いずれ伊織のいない生活にも慣れ、伊織のことを考えなくなるのだろうか。伊織のことは忘れない。だからと言っていつまでも伊織に縛られるのは伊織も良しとしないだろう。あの日言っていたじゃないか、伊織は一人でもやっていけるようにすると。だから僕も伊織がいなくてもやっていかなければいけない。


 そんなことを考えているうちに学校に到着した。人が集まっているのを見るとおそらくクラス掲示だろう。僕もそこへ向かうと、和也がいた。(椎名和也、僕のもう一人の幼馴染だ。ただ家が少し遠いところにあるため通学は別だ。後は休みの日は伊織も合わせて3人で遊んでいることが多かった。)僕は和也に声をかける。


 「おはよう、和也」


 「ん、冬弥かおはよう」


 「ねえ、これってクラス分け見てるんだよね?」


 「そうだよ。俺も今来たところだからこれから見るんだ」


 「同じクラスだったらいいね」


 「そうだな。俺も同じクラスだったらいいと思ってるよ」


 僕と和也はクラス表を見る。しばらくして僕は自分の名前を見つける。


 「あっ、僕1組だったよ」


 「俺も1組だった」


 「よかったー。和也と同じクラスで少しは楽になれたよ」


 「ああ、仲いい奴がいると気が楽だからな」


 「でも、新しい友達ができるといいよね」


 「そうだな」


 そんな話をしながら教室へ向かった。


 教室へ着くと黒板に張られた紙に目が行く。おそらく自分の席が書いてあるのだろう。


 「席は決まってるみたいだね。自由だったら和也の近くに座ったのに」


 「しょうがないだろう。ほら、席も見たんだし座るぞ」


 僕は席に着き少し周りを見てみる。なぜか偶然にも僕の周りには同じ学校の生徒がいなかった。こういう時何かの物語なら近くの人が話しかけてくるんだよね、などと考えていると時間になったためだろう。教室に先生が入ってくる。


 「皆さん、おはようございます。これから入学式ですので廊下に並んでください」


 僕たちは廊下に並び、体育館に向かった。




さて、特に何もなく入学式が終わり、今は教室に戻り自己紹介である。次は僕の番だが自己紹介はどうしようか、簡単に名前と趣味などを話す人が多いので同じようでいいだろう。


 「保科冬弥です。趣味は読書です。皆さん仲良くしてくれるとうれしいです。これからよろしくお願いします」


 僕の自己紹介が終わり、そのあとも自己紹介が進む。やがて女子の自己紹介に入り、隣の女子が立ち上がる。


 「北条雅です。趣味は音楽を聴くこと、後は読書も好きです。皆さんこれからよろしくお願いします」


 なぜだろう、少しだけ彼女、北条さんが伊織に重なるところがある。別に外見がということではない。何がとは言えないが僕はそう思ってしまった。


 自己紹介が終わるとすぐに解散となった。僕は和也のところまで行った。


 「和也、今日は予定ある?ないならどこか行かない?」


 「ああ、じゃあどこか行こうか。行きたいところある?」


 「うーん、そうだな。何か新しい本あるかみたいかな」


 「じゃあいこうか」


 僕たちは学校を出て本屋へ向かった。




 結局本屋では面白い本が見つからなかった。そこで和也と別れ家へ帰った。部屋で一息つくといろいろなことを考えてしまう。和也は伊織がいなくなってしまってから、伊織のことを話さなくなった。それはおそらく僕に気を使ってのことだろう。それはありがたいことだ。ならばこのことを気にするのはもうやめよう。


 ねえ、伊織。伊織がいなくなってから何かあると伊織のことを考えてしまう。やっぱりまだ伊織がいないことに慣れないよ。でも、伊織がいないことにいずれ慣れてしまうのだろう。それはしょうがないことだろう。でも、それはいいことなのかな?


 大切なものはなくなってから気づくというが、その通りだと今は思う。伊織がいなくなってから僕は伊織が僕にとってどれだけ大切な存在か気づかされた。つまり僕は


 「僕は伊織のことが好きだったんだ」


 僕がつぶやいた言葉に答える人は当然いない。でも、僕が伊織のことを好きだったとしても、それはもう僕の過去の思い出にしなければいけない。そうだよね、伊織。これから僕たちは別々の道を歩み始めるんだから。でも、もう少し、もう少しだけ伊織のことを思い続けてもいいだろうか?いつかこの思いが思い出になってしまうのなら。


 

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