異世界に土竜転生〜ダンジョンを掘って掘って掘りまくる〜序章
俺は掘る。
掘って。
掘って。
掘って。
掘って。
掘って。
掘りまくる。
目の前の土を掘りまくる。
俺の手は平べったく大きく、鋭い爪が生えている。
その鋭い爪で土を掘り進む。
その掘る腕は短く、茶色く細かい毛で覆われていた。
どうして俺がこんな目に。
その呟きは腐るほどしてきた。
短い腕をしゃかりきに動かし、怒りを土にぶつける。
くそおおおおおおおおお。
頭の中で叫んだ時、急に前がひらけた。
「しまっ!」
俺は土で囲まれた広い空間に飛び出し、そのままベチャリと落ちた。
「イタタタ……」
「キャー――! モンスターよお!」
女の悲鳴が響き渡る。
「戦闘態勢を取れ!」
男の怒号で五人の人間たちが、俺に向けて一斉に武器を構えた。
「ひい!」
俺はすぐに真下の土を掘り、地面の中に逃げた。
うおおおおお!
殺されるううううう!
俺は必死に土の中を進む。
今の自分は身体が小さく、手足も短い。
もたもたしていたら追い付かれる。
手足を精一杯動かし、土を掘る。
力の限りに掘り進み続ける。
やがて人間たちの声はしなくなった。
後ろから土を掘られる気配もない。
ま、撒いたか?
そう思った時、また目の前がひらけた。
「しまっ!」
身体が空中に放り出され、またベチャリと落ちる。
「イタタ……はっ」
俺は慌てて周りを確認する。
土で囲まれたその場所には、誰もいなかった。
「よかった……」
俺は安堵の息を吐く。
「危ない危ない。慎重に行かないと」
土壁の向こうには、ここと同じような空間の部屋がいくつもある。
その距離は様々。
隣の部屋まで数センチしかないこともあれば、何メートルも続くこともある。
その距離を見誤ると、今みたいに勢いあまって部屋の中に飛び出てしまう。
「今の俺は見付かるとヤバいんだからな」
今の俺は二頭身のずんぐりした身体で、短い手足からは鋭い爪が伸び、前に飛び出た鼻と小さな目のモグラ型モンスターになっていた。
人間や他のモンスターに会えば一方的に殺される雑魚モンスター。
こんな風になる前は普通の人間だったのに……。
「何としても生き延びてやる」
俺はこぶしを振り上げ、自分を奮い立たせる。
俺には目標があった。
こんな目に遭わせたあいつに、一矢報いるという目的が。
その為に、このダンジョンにも来たのだ。
「よし。やるぞ!」
俺は土壁に向かうと爪をたて、また掘り始めた。
当面の目標は、人間や他のモンスターに反撃出来る何かを見付けることだ!




