焦土
コタロスタはGマンで、誰からも雇われずに価値を交換して生活した。必要な飲食、寝床と引き換えにコタロスタは服を造った。
ある日コタロスタのところに男がやってきた。
コタロスタの国がCイナの水爆で滅んだ。大地には何も無くなったということだ。
丸虫も貝がらの花もワニもカメもミシンを守っていた兵士も馬の彫刻も白い階段も白い部屋も老人も音楽会場もオレンジ色の髪の女も頭上から圧倒的な力をで地面へ押しつぶされて焼け焦げた。コタロスタの国は破壊された。僅かに残った生き物達を黒い雨が打った。僅かに残った生き物たちの精神とDNAは深く傷ついた。
いずれCイナがやってくる。再び資本主義の国ができるだろう。人の限界を超えた悪業を恨まれないように、放射能を恨まないように原子力発電所が造られるだろう。新たな国民は昔の国民のように愛想笑いをするだろう。虐待を受けているのに笑うだろう。原子力の爆弾によって、生を奪われたけど、同じ力は我々の希望の資源です。DNAの破壊、それによる健康被害が現れても放射能との関連は認められないだろう。原子力を人類の神とする歴史が終わるまでは。
コタロスタは自作のマスクをしていた。コタロスタは黒い雨を避けるレインコートを着ている。
コタロスタは焦土の上のミシンに座る。塵まじりの赤黒い空を見ている。
描くために目を澄ますように
歌うために耳を澄ますように
語るために心を傾けるように
コタロスタは僅かに残った子供たちの破壊された皮膚を縫った。砕けた骨を繋いだ。破壊されたDNAを縫った。コタロスタと5人の子供たちは黒いレインコートと黒いマスクをして焦土の上を歩いた。