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歌
飴色に溶けるやさしい光のある落ち着いた照明の部屋。ざわめきがあるが、聞き間違えかもしれないような静かな雑音。グラスも静かにぶつかりあい眠気を誘う音量であいさつが交わされる。部屋の奥の方は暗い闇になっていて見えない。闇の方から歌声が聞こえる。視界に入る親密なものに届くように声を飛ばすような歌声。やさしくて大好きで神経をどこまでも鎮めてくれる歌声。歌声に聞き入る人々の頭から耳からクモの糸のようにふわりふわり金色の糸が立ち上っている。コタロスタの左耳からも金色の糸が宙に舞う。歌が人々の感覚を共有させると、金色の糸がクモの巣のように絡まり合い、徐々に太くなり、脈打つように震えている。