-プロローグ 小さな非現実-
それは突然思いついた事だった。
もしも、イメージしたことが現実になったら。
よくある願望だろう、きっと
何でもかんでも思い通りに行けば良いのに
何もかも自分の思った通りに進めば楽なのに
そんなの誰もが思う当然の願い
そんな願いがもし、本当にかなってしまったら、一体人は、いや俺はどうなってしまうのだろう?
そんな謎の思考を毎日膨らませながら俺は今日もゲーセンで16マスのボタンで次々と現れるマーカーを押す音ゲーをしていた。
「なんだこの曲マジで難しい!!!」
俺の友人はいつもそう言いながらAランクSランクを余裕ぶった顔で取ってしまうのだ。正直憎たらしい
もし、この曲をパーフェクトにこなしてしまったら、友人はどんな反応をしてしまうのだろう?
なんだか想像すると面白かった。
「もっかいやろーぜー」
「腕疲れたって!」
「気のせいです」
「はいっ…。」
このやりとりもすでに本日5回目である
このゲームはなんと、200円入れると6曲も遊べてしまうと言う超お得なゲームなのだ!
そんなこんなで6回目(つまりここまでで30曲は遊んでる)友人の高難易度連戦に誘われいつも通りパスワードを入力、クレジット投入、マッチング(いわゆる通信機能)までの手順を済ませる。
1曲、友人はにっこり笑顔でこちらを見ながらまたもや難しい曲を選択した
俺はいつも通りの「無理だろこれ(笑)」的な顔で見つめ返す
そうすると「俺に任せろ(キリッ」的な顔をし始める
曲が始まる…
どうやら初めの方はそんなに難しくは無いようだ
「ここからが気持ち悪いんだよなー」
と一言不安を煽るような発言をする友人、残念ながらプレイに集中している俺はそれに反応することもできなかった。
案の定かなり難しかった、はずだった。
1曲目終了、リザルト(結果)を見た時、友人は青ざめた顔でこちらを見る
「お前どうした、何故パーフェクトとれるんだ」
「え…あれ…本当だ…」
なんと、俺はパーフェクト判定を取っていたのだ。
普段の俺なら確実に無理なのに、おかしい。
ふと、自分がイメージしてたことを思い出す。
そんなバカな(笑)
とか思いつつ残りの5曲も同じようにすると
全てパーフェクト判定を取ってしまった
友人はもはや「何こいつ気持ち悪っ…」的な顔でこちらを見ている
イメージしたことが現実になった…?
ありえない、非現実的だ。
でも、この状況はどう説明したものか…
本当にイメージしたことが現実になったと言うのか…?
頭の中がくしゃくしゃになりながら俺は友人に色々質問されながらゲーセンを後にした。
これが、楽しい日常の始まりだった…。