夢
「寝てる時間ってもったいなくない?」
思いついた事をぽつっと言ってみた。
酔い潰れ、僕のベットで気持ち良さそうに眠っている恭太を見つめつつ・・・。
「えっ、いきなり何言ってんの?」
床に座り込み、ケータイをいじっていた潤が顔を上げ、僕を見て笑いつつ言った。
8月中旬。今日は高校のツレ3人での飲み会。
3人とも進学で地元を離れた為、長期休みは地元で遊ぶ事にしている。
久々の再会のせいか3人とも飲みすぎた。
しかし、恭太が酔い過ぎた為、僕の酔いは一気に醒めた。
そんな僕は、歩く事も出来ない恭太を居酒屋から僕の部屋まで運んだ。
そしてボケっとしていたら何だか感慨深くなってしまい、ゆっくりと話始めた。
「だってさ、人間の生きれる時間は限られてるんだぜ?
寝る時間があるならもっとやりたい事やりたくない???」
「う〜ん、そうだけど、オレ寝るの好きだからそうは思わないな。」
「1日24時間だけど、記憶があるのって実際18時間位じゃん。
寝るって行為をしなくても生きれる身体だったらもっと遊べて楽しいとおもわない?」
「いきなりどうしたんだよ?お前も酔っぱらい?
…でも、寝る時は夢見るから何もしてないワケじゃなくね?」
「夢って・・・何か違わない?」
「違わないだろ?
そうだ。オレが今から夢の良い話してやるからちゃんと聞けよ〜。」
そういって潤はにやけつつ話出した。
オレより絶対潤の方が酔っぱらってる。
「いいか、神様が人間を作った時、人を寝なきゃ生きれないようにしてしまったんだ。」
「あぁ…。」
「それは夢を見るため。
夢って楽しかったり、怖かったり、幸せだったりするだろ?それは日々の生活とリンクしてるんだって。」
「そうなの?」
「その時考えてる事や、心情が夢になるんだって。お前も好きな子が夢に出てきた事あるだろ?」
ニヤニヤしつつ潤が言う。
「かと言って辛い時に辛い夢を見るわけじゃないんだ。辛い時は逆に楽しい夢を見て、キモチを幸せにして精神を安定させてるんだって。」
「へぇ―。せめて夢だけでも幸せに。って事か。」
「そゆこと。あと、夢は普段忘れがちな事を教えてくれるんだ。」
「そうかぁ?」
「それは、見た夢から自分で読み取らなきゃいけないんだよ。夢からのメッセージを。そうしなきゃどんな夢もすぐ忘れちゃうからな。」
僕は潤の言葉を一つ一つ噛み締めた。
そうか、夢は現実を生きていくために必要な幻想なんだ。
「潤にしてはすごい事言ってるけどクサイぞ。」
納得しすぎたからちょっとからかってみた。
「オレ心理学専攻だからな。ま、何よりロマンチストなのさ。」
「意味分かんねーよ。そうだ、最近元カノとヨリが戻る夢見たんだけどさ、それってどゆこと?」
潤に問う。
「それはお前がずっとその子の事考えてるって証拠だよ。その夢見て幸せだったんだろ?」
「…そこまで…。」
ホントは目が覚めて夢だって分かった瞬間かなりショックだった。
「ま、夢なんて不確かなものだからオレだってよく分からんよ。謎めいてるからそれを考えたり、希望を感じられたりするから下手に解明しちゃいかんのさ。」
「そうだな。」
ちょっとしんみりした空気を2人で笑った。
「飲み直すかぁ。恭太のせいで酔い醒めちゃったし。」
そう言って僕は立ち上がった。
「あぁ。…しかしこいつ幸せそうだなぁ。」
潤は恭太の隣に行きほっぺを軽くつついた。恭太は全く動じない。
「どんな夢見てるのかな。」
涼しい風の入ってくる窓から僕は天を仰いだ。
田舎の夜空は吸い込まれそうなほどキレイだった。