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#9 恋か友情か(3)
ズキッと音が聞こえるくらい、胸が痛んだ。
「いないよ」
その言葉が何度も頭の中で木霊する。
ナギが、私のことを隠そうとしてくれているのは分かっている。
実際、私自身が隠してほしいと頼んだ。
でも、いざそんな言葉を耳にすると、なんとも言えない寂しさが身体の中を駆け巡る。
私は泣きそうになりながら、その場に立ち尽くした。
「でも」
ナギの声が続いて、顔をあげる。
「好きな人はいるよ」
それは、彼女である私のことだけど……目の前にいる弥生のこととも取れるような言い方だった。
「その、好きな人って……誰なの?」
弥生が期待の入り混じった声をあげた。
「誰にも言ってないから、秘密」
確かに、ナギが私を好きなことは、誰も知らないはず。
でも、状況が状況なだけに、弥生はますます期待を膨らませてしまう。
「わ、私もね、好きな人いるんだ!」
感想とか意見とかくれると嬉しいす