#87 意味深な謎(4)
何を言っても、「別れろ」の一点張り。
埒が明かず、結局真相は何も分からず終い。
父は頭を丸め、母の看病をすると言っている。
にわかには信じられないが、私も帰らなければならなくて、父に母を預けるしかなかった。
『貴哉くんとは、別れて』
その言葉が頭の中でぐるぐると渦巻いた。
絶対に受け入れられるはずがない。
もうどうしようもなく彼を愛してしまった今、彼を私から奪うということは私から人生を奪うに等しい。
「姫虎、最近元気ないな。体調でも悪いのか?」
バイトの休憩中、ぼんやりしていると貴哉さんに声をかけられた。
「い、いえ……、大丈夫です……」
母に言われたことは貴哉さんには絶対言えない。
「ただ、この前お母さんが倒れてしまって……」
「もしかして、親父さんの不倫が原因……?」
「い、いえ……、も、もうこの話はやめましょう!」
父がまた貴哉さんのお母さんと不倫したなんて話をしたら、彼を暗い気分にさせてしまうだけだ。
「そうだな。辛いことがあったら、ひとりで抱えこまねぇで俺に言ってくれよ」
そう言って私の頭をポンポンと叩くと、仕事に戻っていった。
その日の帰り、貴哉さんに誘われ、彼の部屋へ行った。




