#85 意味深な謎(2)
地元への滞在期間が終わり、貴哉さんと共に故郷を後にした。
「……あの後、メールじゃ大丈夫って言ってたけど……」
貴哉さんは聞きにくそうな様子で、「心配だったから」とあの時のことを聞いてきた。
「はい、ひとまず離婚の心配はなさそうでした。でも、あんなお母さん見たの初めてで……」
「あんな、って?」
「なんだか冷酷っていうか、感情がないみたいな……」
「やっぱり、旦那が不倫してたってわかったら、ショックなんじゃねぇか?」
「……ですよね」
あの時の母の言動が妙に気になったけれど、深く考えないようにした。
今回の帰省で、衝撃の大きい出来事が起きたけれど、そんな中でも冷静に対応してくれた貴哉さんの姿を見て、より好きになってしまった気がする。
それと同時に、どんどん彼にハマってしまう自分がなんとなく怖く思えた。
東京に戻ってしばらく経ったある日。
突然、父からの電話が鳴った。
「……もしもし」
「もしもし、姫虎か!?か、か、母さんがな……!」
「何、お父さん落ち着いて」
「母さんが、倒れた……!」
「え……!?」
頭を殴られたような気分になった。
今まで何の病にも侵されていなかった彼女が倒れるなんて、想像もしていなかったことだ。
私は飛ぶように実家に帰った。
母が入院している病院に行くと、ベッドに顔色の悪い母が横になっていた。
その脇にいた父と目が合うと、「話がしたい」と言われ、休憩室へ移動した。




