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#83 人間の弱さ(6)
ところが、父はこんなことを言ってきた。
「……姫虎こそ、辰巳くんと付き合ってるんじゃないのか?」
一気に頭に血がのぼったのがわかった。
「私は貴哉さんと付き合ってるの!貴哉さんが好きなの!お父さんと一緒にしないでよ!」
泣き崩れた私の肩を貴哉さんは抱きしめてくれた。
「お父さん、俺が口出しできることじゃないし、そんな立場でもないけど、姫虎を守るって決めたから言わせてもらいます。……姫虎に謝ってください」
「え……」
私と父は同時に彼を見た。
「あなたの軽率な行為で娘を傷付けたというのに、謝罪の言葉もなく、姫虎を同罪にして逃れようとするんですか」
すると、貴哉さんは私に向かって手と膝をついて頭を下げた。
「この件に俺の母親が関わってたこと、俺から謝る。……辛い思いさせてごめん……」
それを見て父は大人気なく思ったのか、軽く頭を下げて謝罪の言葉を述べた。
「……すまなかった」
「……お母さんにも、謝ってください」
「あぁ、謝るよ」
貴哉さんのお母さんは、ニヤリと不気味な笑みを零しながら煙草の煙をふぅーっと宙に吐いていた。




