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#80 人間の弱さ(3)

祝80話!

ここまで読んでくださってありがとうございます!

これからもよろしくお願いいたします!

「あぁ」



貴哉さんはソファーに座り、私を膝の上に座らせながら口を開いた。



「両親は俺が小さい頃に離婚して、親父は最近病気で死んだらしい。母さんは再婚もしないで男つくって遊んでる。だから……」



そう言って、貴哉さんは私を求めるような熱くて激しいキスをくれた。



きっと、両親からの真っ直ぐな愛を注いでもらえなくて寂しかったんだろう、そう感じた。



だから、私が彼の寂しさを拭ってあげなきゃ、そんな思いで私は彼に応じた。








貴哉さんは私を優しく抱きしめてくれた。



「ごめん……」



「え?」



「気持ち抑えられなくて……。いつも辛いよな」



彼はいつも、私を抱いた後に自分を責める。



「そんなことない、私、すごく幸せですよ?」



貴哉さんの肩に頭を寄せた。



まったりとした空気の中、失礼を承知で思ったことをぽつりと言ってみる。




「貴哉さんは、本当は寂しがり屋さんですか…?」



案の定驚いた表情を見せる彼だったが、フッと呆れたように眉を下げ、私の肩を抱き寄せた。



「姫虎には敵わねえな。両親の話でそう思ったんだろうが……まったくその通りだ。母子家庭で家計も厳しくてよ、高校も大学も学費免除のために勉強漬けとバイトの毎日だったからな……。愛情なんて、俺とは無縁だと思って生きてきた」



「グレたりとかは……?」



「一時期何もかも嫌になって全部手放して遊び歩いたよ。……あんま言いたかねぇが、カツアゲだの女遊びだの気を晴らすためにいろいろやった。……でもある時思ったんだよ、立派な人間になって俺を捨てた両親を見返してやろうってな。ロクに飯も食わせてくれねえ母親なんて、いていねぇようなもんだからな」



貴哉さんの過去を知れて嬉しい半面、その壮絶さに私はショックを受けた。



そして、そんな彼を支えられるのは私だけ……。



「……姫虎、お前はこんな俺を愛してくれるのか……?」



コクリ、と頷こうとした、その時。



ガチャ、と玄関が開く音がした。



「あ、誰か来る……!」



焦って毛布を被ると、



「大丈夫、母さんだ。あいつ、俺のことには口出ししないから」



「……ほんと?」



服も着ないまま彼の母親と対面することに戸惑いを覚えたが、今からではどうすることもできない。



ドキドキしながらお母さんがリビングに入ってくるのを待っていると。

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