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#8 恋か友情か(2)
次の日の放課後、私は弥生を呼んだ。
「ナギが待ってるから」
私は、屋上への階段をのぼるように促した。
「もう、緊張するー」
「弥生が話したいって言ったんじゃん」
「緊張するものはするんだよーお!」
笑顔の欠片すらない顔を隠すように、いいから、いいから、と私は弥生の背中を押した。
早く終わらせてしまいたかった。
恋人も友達も失うのが嫌だから。
でも、何も失わず、何も壊さず、静かに事が終わるなんてあるのだろうか。
ナギを失いたくない、絶対に。
弥生は緊張すると言いつつも、驚くべき速さで階段をのぼっていった。
ナギには、階下にいてほしいと言われた。
耳をすませば会話が聞こえてくる距離で、ナギが私じゃない女の子と話してる。
胸がチクッと痛んで、嫉妬なんだと実感した。
弥生のいつもより高い声が聞こえる。
「辰巳くん、彼女いるの?」
ドキッと心臓が脈打った。
ナギはなんて答えるの?
ギュッと目を瞑ると、何の躊躇いもない返答が聞こえた。
「いないよ」