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#79 人間の弱さ(2)
「じゃあ……、ウチに来るか?」
貴哉さんは私の手を優しく握った。
「……はい、ぜひ!」
私が彼の手を握り返すと、彼はクールに微笑んで歩き始めた。
貴哉さん家は、さすが出身校が隣同士というだけあって、私の実家からそう遠くなかった。
「お邪魔します」
玄関に足を踏み入れる。
彼の領域にまた1歩入り込めた気がして少し嬉しかった。
リビングはそんなに広くはなかったが、雰囲気が素敵だった。
オシャレなお家ですね、そう言おうとした時。
「ん……っ」
彼に突然唇を唇で塞がれ、腰をグッと引き寄せられた。
「た、貴哉さん……!?」
「ん?」
彼は私の胸に顔を埋めながら少し甘えた声を出した。
「こ、ここでですか……!?」
「……うん」
またいつもと違う一面にドキドキしながらも、こんな所で、という理性が彼を拒もうとする。
「ご、ご両親とか、帰ってきたら……」




