#78 人間の弱さ(1)
私は貴哉先輩と付き合い始めた。
当然、ナギに対する罪悪感はあった。
けれど、今、自分の周りにナギとの出来事を知る人はいない。
ナギだって、私を捨てて他の女といるかもしれない。
そして何より、寂しさには勝てなくて……。
私は貴哉先輩の腕の中に収まった。
ナギを忘れないという誓いは、快楽を目の前にして簡単にほどけてしまった。
先輩とは、初めて会ったときから何か親近感のようなものを感じていた。
地元が同じというだけではなくて。
たまに、私と似てるなって思うときもあって。
大人びた雰囲気のある彼だから、私を恋人にしてくれたことをとても嬉しく思った。
少しの月日が流れ、お盆の時期になった。
私は地元に帰る予定はなかったけれど、先輩が帰るというので、一緒に帰省することにした。
蒸し暑い中、地元の駅に降り立った。
「こっちで姫虎といるの、初めてだな」
「そうですね!えと、先輩の家はどっち方面ですか?」
「あっちのほうだけど……、あのさ、そろそろ『先輩』って呼ぶの、やめね?」
「え、あ、はい……っ。た、貴哉さん……っ」
突然の提案に、私は赤面して俯いた。
「ん……、ぎこちないけど……、まあいいか」




