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#74 新たなる地獄(4)
「本当、美味しかったです!」
車に戻ってお礼を言うと、貴哉先輩は満足そうな顔をしていた。
「なあ、もう1件行っていいか?」
「え、はい、大丈夫ですよ?」
貴哉先輩は一度家に戻り、車を置いてきた。
そして連れて来られたのは、居酒屋だった。
「あ……、だから車置いて来たんですね」
「そう、姫虎は呑んだりする?」
「新歓のときとかに少し……」
なんだか大人になった気がして、気持ちが高まってきた。
半分個室のような席に向かい合って座ると、貴哉先輩は慣れた様子でビールや料理を頼んだ。
「姫虎は何飲む?」
「じゃあ、カシオレで」
注文の品が運ばれてきて、私たちは乾杯をした。
貴哉先輩は一瞬でジョッキいっぱいのビールを飲み干した。
「先輩って、酒豪……?」
「んー……、すぐ酔っちまうけど、わりと呑むかな」
「呑み過ぎないように気をつけてくださいよ」
私がカクテル1杯を飲み終えた頃には、貴哉先輩はビールジョッキ3杯を空にしていた。
酔った貴哉先輩は、声がバカでかくなったり大笑いしたりというタイプではなく、顔を真っ赤にさせてぼんやりしている方だった。




