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#7 恋か友情か(1)
「ヒメコ、私、辰巳くんとお話したい」
弥生が唐突にそんなことを切り出してきた。
「……え、うーん……」
「ダメなの?」
「ちょっと……」
「でもぉ、ヒメコが拒否する権利はなくない?」
本当なら、ある。
ナギは私の彼氏なんだから、嫌だって言える。
でも、弥生は私がナギの彼女だって知らないし、今さら打ち明けることもできない。
「……わかった。聞いてみるよ」
ナギならどうにかしてくれると思った。
「弥生が、ナギと話したいって……」
「断んなかったの?」
「断ろうとしたけど、タイミング逃しまくって……。ナギから、私と付き合ってることは伏せて断ってほしいの……」
「……わかった」
しばらく考えた後、承諾してくれた。
その代わり、と言って、ナギは私を求めてきた。
拒否はしなかったけど、弥生の顔が浮かんで、複雑な心境だった。
でも、何度も『好きだ』って言葉を身体に刻まれて、ナギに愛されていることを実感した。