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#68 複雑な想いで(3)
ナギのいない毎日は本当につまらなかった。
胸にぽっかりと穴が空いてしまったような、心臓を握り潰されているような、何とも言えない喪失感に襲われた。
でも、いつも浅香くんが側にいてくれて励ましてくれるから、彼のおかげで涙を流す回数が減っている気がする。
ナギの退学から少し月日が流れ、季節は冬になった。
あと4ヶ月足らずで卒業という時期。
私は東京の大学への進学が決まった。
浅香くんは地元に残り、実家の店を継ぐらしい。
そうなると、卒業後に彼に会うことは簡単ではなくなるだろう。
浅香くんのことは友達として大好きだから、残りの日々を大切に過ごそうと決めた。
校内で恐れられる存在でもあった浅香くんが一緒にいてくれたこともあってか、その後いじめられることもなく、平和に卒業までの月日が流れた。
そしてとうとう卒業の日が訪れた。




