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#64 温もりと孤独(5)
私の嫌な予感は的中することになった。
翌日、私の病室にひとりの男子生徒が駆け込んできた。
私やナギの唯一の味方と言っていい、浅香龍くんだった。
彼はついこの間、停学が明けたそうだ。
「ヒメちゃん、大変だ!」
いつも余裕な表情を見せる浅香くんの、こんなに焦った顔は初めて見た。
「どうしたの!?」
彼は私のベッドの脇でハアハアと息を調えると、緊迫した面持ちで口を開いた。
「……辰巳が、停学処分をくらった」
頭を殴られた気分だった。
「え……、浅香くん、冗談はやめてよ」
私は顔を引きつらせた。
嘘だと信じたかった。
というか、真実だと信じられなかった。
「冗談じゃないんだ……。辰巳は4組の拓馬をボコボコにして、数ヶ所を骨折させちまったんだ。しかも、停学になるなら退学するって申し出て、学校辞めちまうらしい……」
「え……!!!?」
身体がわなわなと震えた。
私のせいで、ナギが退学に……!!
涙が次から次へと溢れて、どうしようもなかった。




