#62 温もりと孤独(3)
「拓馬って、弥生にしつこくつきまとってたっていう……?」
私は頷いた。
かつて、そのことをナギに相談していたことがあったのだ。
「突然、廊下で声をかけられたの。弥生を殺したのはお前だ……って。……それで首を締められて、苦しくて抵抗できなくなって……、そのまま校舎裏に連れていかれて……。弥生を死に追いやった私が、ナギと楽しそうにしてるのが憎いって……。だからふたりとも傷付けてやるって言って、下着脱がされて……」
「もういい!!」
ナギは突然声を張り上げた。
驚いてナギを見上げると、彼は怒りに震えているようだった。
「助けてやれなくて、悪かった……。怖かったよな……?」
彼は跪いて、私の手を自分の額に当てた。
「……ナギ以外の人に、身体を許しちゃってごめ」
「だから喋るなって!!」
額に当てた私の手を摩る彼の手は震えていた。
「お前がそんな風に無理矢理されたってのが、許せねーんだ……!!」
私の手を額に当てたままだから、彼の顔は見えない。
「ヒメコが弥生を殺した……?ヒメコも俺も傷付けてやる……?ふざけるな!」
ナギは私の手をベッドに置き、そして顔を上げた。
彼の顔を見て、私ははっとした。
その顔は中学時代、ヤンキーだった頃のナギの顔ーー元々つり上がった目をさらに鋭く光らせ、口元を不敵に歪めていたのだ。
ナギは立ち上がり、部屋から飛び出そうとしていた。
「待って!」




