#56 恋愛感情の闇(3)
頭に鈍い痛みが走り、私は目を覚ました。
私はひとり、校舎裏で気を失っていたようだ。
拓馬の姿はない。
起き上がると、下腹部に嫌な痛みが走った。
「いたっ……」
震えが止まらなかった。
不本意に拓馬を受け入れてしまったことやその恨みの大きさが、薄れかけていた弥生に対する罪悪感を呼び起こした。
そして何より、ナギを裏切る行為をしてしまったという思いが大きかった。
いくら、私が望んだことではないとしても、拓馬と交わってしまった事実は変わらないし、二度とナギの前に身体を晒せない、そう強く感じた。
……ナギに知られることが怖かったのだ。
私は衣服を整え、震える脚で薄暗い学校から逃げるように去った。
その後ろ姿を、私を探していたナギが見ていたとも知らず。
次の日から、私はナギを無意識に避けるようになってしまった。
彼と正面から向き合って、拓馬と交わったことがバレてしまうのが怖かった。
結果としてナギも私自身も傷付けることになるとわかっていても、事実を話す勇気が起こらなかった。
しかし、勘の鋭いナギが私の異変に気付くのに時間はそうかからないわけで。
昼休み、私は彼に誰もいない教室へ連れ込まれてしまった。




