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#52 味方(9)
水と泥に塗れた私たちは、ナギの家で乾かすことにした。
「脱がしてやるから待ってろ」
彼のスラッとした指が、水と泥で重くなった私の制服を脱がしていく。
幾度となく私の身体を掻き乱した指。
久しぶりにその指で触れられて、こんな時なのにドキドキした。
「制服は泥落としとくから、ヒメコは風呂に入ってろ」
彼は制服を水に浸しながら言った。
私は、湿った下着姿のまま、ナギの袖を掴んだ。
「……一緒に、入ろ?」
無意識のうちにそう言っていて、自分の発言に後から赤面した。
でも、それを取り消そうとは思わなかった。
ダメならダメでいい、そんな気持ちで。
ナギもまた、顔を真っ赤にしていた。
「……俺たち、付き合ってるわけじゃねぇんだ」
こちらを向かずにそう言って、彼は洗面台で制服の泥を落とし始めた。
「そう、だよね」
私はお風呂のドアを開けた。
その途端、クラッと視界が歪んで、壁に頭をぶつけてしまった。
「いたた……」
頭をさすりながら、千鳥足で風呂場に入る。
そんな私を見て、彼は私を呼び止めた。




