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#46 味方(3)
浅香くんの家に着くと、ドライヤーを借りて髪や服を乾かした。
「せっかくだから、お菓子でも食べてってよ。今持ってくから、俺の部屋に行ってて」
「うん、ありがと」
浅香くんの部屋は、シンプルに整理されていた。
勝手に、散らかった部屋を想像していたから、少し申し訳ない気持ちになった。
部屋に足を踏み入れると、何かが足元をくすぐってきた。
驚いて下を見ると、猫が私の脚に擦り寄っていた。
「あ、ルル!」
中学のときに一度だけ会ったことのある、浅香くんの愛猫だ。
ルルは私を見上げて「にゃん」と鳴くと、ベッドの下に潜り込んでいった。
「待って、ルル」
私はルルを追ってベッドの下を覗き込んだ。
暗いベッド下にルルの瞳だけが2つ光っていた。
「おいで、ルル」
ルルはその場に横たわると、ひとつ大きなあくびをした。




