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#37 堕落の果てに(9)
弥生の声は、今にも消えてしまいそうだった。
「弥生!?今どこにいるの!?」
『……ーー犯人は今も逃走中です。不審な人物を見かけたらーー……』
弥生の背後から、微かにテレビらしき音が聴こえたが、消されてしまったのかすぐに静かになった。
テレビの声は、確かに航くんが殺害された事件のニュースだった。
……弥生は航くんの死を知ってしまったんだ。
あの日のふたりは、初めて会ったとは思えないほど意気投合していた。
ナギによると、航くんも次また弥生と会えることを楽しみにしてくれていたらしい。
どうして次々と弥生を不幸な目に合わせるの……?
まるで、弥生を闇の世界に引きずり込んでいるかのように……。
「家にいるんでしょ!?今行くから、待ってて!!」
私は涙に塗れながら叫んだ。
「来ちゃ、ダメ……!」
絞り出すような弥生の声が聴こえた。
「……ヒメコには、見られたくないの……。最期に……ヒメコの声……聴き……くて……」
途切れ途切れに彼女の声が聴こえる。
まさか……もう……!?
「弥生!?何、最期って!?」
「……ヒメコ、いっぱい……迷惑……ごめ、ね……。ありが……と……」




