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#36 堕落の果てに(8)
ロビーに行くと、テレビがついていた。
『只今入ったニュースです。先程、午後4時頃、○×市の路上で男子高校生が刺殺される事件が起きました。亡くなったのは、市内の高校に通う高山航さんで、高山さんを刺した男は今も逃走中ということです。……』
もうテレビに出てる……
そう思った瞬間、ナギが声を張り上げた。
「ヤバい、ヒメコ!弥生にニュースを見せるな!」
私はナギが言わんとしていることをすぐに悟り、大きく頷いてから病院を飛び出した。
精神的にズタボロの弥生が、あのニュースを見たら、彼女はきっと正気ではなくなる。
その前に……
ここから弥生の家まではそう遠くない。
駆け出して間も無く、ケータイがなった。
ケータイを取り出した途端、ドキリと心臓が跳ね上がり、地面に落としてしまった。
呼び出し人は、弥生だったのだ。
私はすぐさまケータイを拾いあげ、耳にあてた。
「もしもし、ヒメコ……?」
弥生の声は枯れていて、聞き取りにくかった。
「ヒメコ……、私、もうダメみたい……」




