#35 堕落の果てに(7)
ナギは青ざめた顔で電話を切った。
「ど、どういうこと……?」
「……わからない。とにかく俺は病院に行く。お前は?」
「私も、行く」
私たちは航くんが運ばれたという病院へ急いだ。
「辰巳……!」
病院に着くと、中学のときの知り合いや、私は知らないナギの友達がいた。
警察らしき人の姿もあった。
「何があったんだよ!?」
ナギの問いに、目を真っ赤にした女の子が口を開いた。
見覚えのある子だ。
確か、真希ちゃん、だったかな。
「女の人にナイフを向けてる男の人がいてね……、航が助けようとしたの……。そしたら、そのまま航が刺されて……!」
真希ちゃんは泣き崩れた。
それをそばにいた男の人が支える。
「真希は目撃したのか?」
「あぁ、俺と真希がたまたま航とあってな、3人でいたんだ。……俺も見ちまったよ……。犯人はまだ捕まってないんだ……。畜生、あん時止めときゃよかった!」
「剛士……」
真希ちゃんの代わりにナギの問いに答えた、剛士と呼ばれた男の人の目にも涙が滲んでいた。
目の前で人が刺されたら、それも友人だったら、ショックは大きいと思う。
辺りはどんよりとした、重苦しい空気が漂っていた。




